手軽な伊勢原 聖峰・高取山ハイキングと麓のカフェで楽しむ野菜たっぷり絶品ランチ
大山の麓に位置する伊勢原には、気軽に歩けて眺望も楽しめるハイキングコースが点在しています。なかでも、聖峰から高取山へと続くルートは急登が少なく、整備された道が多いため、初心者にもおすすめです。聖峰の山頂からは、眼下に広がる相模平野や江の島が、そして高取山の山頂からは正面に雄大な大山を望むことができます。山歩きのあとは、麓のカフェでひと休み。「cafe mocka木果」で、地元産の野菜やオーガニックの食材を使ったメニューやスイーツを味わいながら、里山歩きの余韻に浸るのはいかがでしょうか。
2つの山頂で開放的な展望と丹沢の山並み、異なる趣の風景を楽しめる「聖峰・高取山ハイキングコース」


聖峰の登山口へは、「伊勢原駅北口」から「栗原行」のバスに乗車しておよそ20分。終点の「栗原」周辺は自由乗降区間となっているため、乗務員さんに「保国寺(ほこくじ)のあたりで下車したい」と伝えておくとよいでしょう。なお、この路線は本数が限られているため、あらかじめ時刻を確認してから出発すると安心です。
保国寺の周辺はのどかな空気が漂い、時間の流れもゆるやかに感じられます。道端に立つ案内標識の下に黄色い紙が貼られているのに気づき、近づいて見てみると、そこにあったのは手書きの地図。これは聖峰世話人会によるものです。聖峰不動尊や参道の整備、草刈りなどを担う地域の方々の手で描かれた地図は、ルートの様子がわかりやすく、これからの道のりを思い描く手がかりになります。


登山口へ向かう道は、しばらく舗装路が続きます。周辺にはみかん畑が点在し、静かな里山の風景が広がります。静かな道を歩いていると、耳に届くのは風の音や、時折遠くから聞こえてくる鳥のさえずりだけ。やがて現れる分かれ道を右へ進むと、聖峰への入口に到着です。この先は葉っぱに覆われた山道が始まります。


登山道の入口には、シカやイノシシなどの侵入を防ぐための柵が設けられています。通過後は柵を閉めるだけでなく、チェーンの輪に金具を掛けて、勝手に開いたり閉じたりすることのないようしっかりと施錠しましょう。
道なりにゆっくりと歩みを進め、山の神社(かみしゃ)の石碑を過ぎると男坂と女坂の分岐に差しかかります。登山道入口からここまで10分ほどでたどり着きました。

分岐に立つと、急勾配の「男坂」となだらかな林道が続く「女坂」の2つの道を示す案内板が現れます。「男坂」は「九十九曲」と呼ばれるつづら折りの急勾配の道が続き、山頂までの所要時間は10分ほど。対する「女坂」は傾斜がゆるやかな分、20分ほどかかりますが、ゆっくりとしたペースで登っていくことができます。
今回は、何度も折り返しながら高度を上げていく「男坂」を選ぶことに。登山道は桜の木の間を縫うように、登ってゆきます。春には、桜や新緑など周囲の森の風景をじっくり味わえるのが魅力です。急ぎ足で頂上を目指すのではなく、山の表情を感じ取りながら一歩ずつ進んでいく――。そんなゆとりある歩き方がよく似合う道といえるでしょう。


木々に囲まれた道を抜けると、やがて視界がふっと開け、分岐から1時間足らずで聖峰の山頂に到着します。標高は約380メートルとそれほど高いわけではありませんが、展望スペースが整備された山頂からの眺めは格別です。伊勢原の街並みをはじめ、江の島まで見渡せる開放感いっぱいの景色が広がります。天候に恵まれれば、新宿副都心の高層ビル群や東京スカイツリーを望めることもあります。
ちなみに、聖峰は初日の出スポットとしても知られています。大きく開けた眺望のなか、東の空がゆっくりとオレンジ色に染まり、やがて太陽が顔をのぞかせ、新たな1年が始まる特別な瞬間。静けさに包まれた山頂で迎える元旦は、多くの人にとってかけがえのない体験となっています。
ベンチも設けられているため、目の前に広がる景色を眺めながら水分補給をしたり、軽く食事を楽しんだりするのもよいでしょう。また、近くには公衆トイレも設置されています。

山頂には、足腰・安産・長寿の守護仏である聖峰不動尊が祀られており、古くから信仰の山として親しまれてきました。賽銭箱の脇には御札が納められた箱も置かれています。普段はお堂の扉が閉ざされているため内部を拝観することはできませんが、毎年5月3日にはご開帳が行われ、多くの参拝者が訪れます。


参拝を終えたら、高取山へ向けて歩き出します。尾根道は比較的歩きやすく、アップダウンもそれほどきつくはありません。木々の間からときおり景色がのぞき、歩く楽しさを感じさせてくれます。なお、落ち葉が積もっている箇所や雨上がりで濡れている場合は滑りやすくなるため、足元に注意して進みましょう。


聖峰から山道を黙々と進むことおよそ40分、高取山の山頂に到着です。標高は約556メートル。聖峰の開放的な眺めとは趣が異なり、こちらでは木々の合間から丹沢の山並みが幾重にも連なる様を楽しめます。なかでも、正面にそびえる大山の存在感はひときわ印象的で、その雄大さに思わず見入ってしまいます。パノラマビューのような華やかさはありませんが、落ち着いた雰囲気のなかで景色と向き合えるのが高取山山頂の魅力といえるでしょう。ベンチに腰掛けて、大山を眺めながらゆっくりと昼食をとるのもおすすめです。
聖峰から高取山へと続くこのコースは、里山の静けさと眺めの良さがほどよく調和した、初心者にも歩きやすいルートです。朝に出発すれば正午前後には山頂に立つことができ、下山後もまだ時間にゆとりがあるのが大きな魅力です。

なお、聖峰は梅や桜の名所としても知られています。聖峰不動尊を包み込むように咲く桜と、眼前に広がる雄大なパノラマを同時に楽しめるのは、例年3月下旬から4月上旬にかけてとなります。ソメイヨシノやヤマザクラと、山頂からの眺望が織りなす、この時期ならではの景色を求めておでかけしてみてはいかがでしょうか。
旬の野菜やオーガニック食材の味を活かしたメニューにほっとする、かわいらしい庭が目印の隠れ家「cafe mocka木果」

聖峰と高取山を歩いたあとの心地よい疲れを、そのままやさしく受け止めてくれるような場所があります。2020年10月にオープンした「cafe mocka木果」です。
国道246号線から住宅街へ入り、川沿いの道を進んだ先に見えてくるのは、大きく枝を広げたミモザの木。ふんわりとした黄色い花が春の光を受けて揺れ、訪れる人をやさしく迎えてくれます。「10年ほど前に植えた小さな苗木が、気づけば家を隠すほど大きくなってしまって」と、店主の三笘さん。ミモザの足元に寄り添うように植えられたロシアンオリーブは、秋になると赤い実を結び、庭にささやかな季節の彩りを添えます。


大学進学を機に神奈川で暮らし始めた三笘さんは、卒業後、都内にある中国茶の会社に就職します。そこで現在のご主人と出会いました。やがて、「いつかカフェをやりたい」という思いをともに抱くようになったのだとか。自分たちのこだわりを詰め込んだ空間をつくり、そこでくつろぐ人の姿を眺める――。そんな光景を思い描いていたといいます。
開業の具体的な話が動き出す前から、ご主人はカフェで使うことをイメージしてひょうたんスピーカーの製作を始めました。自然の形をそのまま生かしたユニークな佇まいと、やわらかな音色が魅力のスピーカーが完成したのは、オープンの2年前のこと。それが店づくりの小さな一歩だったのかもしれないと、三笘さんは振り返ります。


「夫は家具製作の学校に1年間通ったこともあるんですよ」と、三笘さんは笑いながら教えてくれました。店内に並ぶテーブルのいくつかはご主人の手によるもの。丈夫で手頃な素材を探す中で床材の活用を思いつくなど、一つひとつにユニークなものづくりのエピソードがあります。普段、会社員として働いているため店頭に立つことはありませんが、自ら手がけた家具の中でお客さまがくつろぐ様子を思い、喜びを感じているそうです。
ふとカウンターに置かれたガラスケースに目をやると、クラシックな雰囲気が漂う雑貨がセンスよく並んでいます。こちらはアンティークが好きな三笘さんの私物。出産するまでは気に入ったものを少しずつ集めていたそうで、そのコレクションがいま、カフェの素敵なアクセントになっています。

しばらくして、いちばん人気の「LUNCHプレート」が運ばれてきました。ひと目で新鮮さが伝わる旬の野菜が、お皿の上にずらりと並んでいます。
使用する野菜は、伊勢原で有機栽培を行う「Irodori農園」のものが中心です。さらに、その味わいを支えているのが、オーガニック食材の持つ力強さです。素材を生かすため、ありのままのおいしさを引き出せるよう、心を配っているといいます。その背景には、かつてレシピ本を頼りに料理をした際、「どこか違う」と感じた経験があり、思い切って調味料を減らしてみると、素材の味がぐっと際立ち、かえっておいしく感じられたのだとか。
たとえば、ごはんの上にのる豚肉は塩をすり込んだだけで、あとは玉ねぎを敷いて無水調理に。すると、素材のうまみが引き出され、頬張ったときに豚肉のジューシーさと玉ねぎの甘さが口の中にやさしく広がります。ほかにも、蒸した里芋に醤油麹とねぎ味噌を合わせた一品や、野菜に塩麹と油を絡めてウォーターオーブンで焼き上げたグリルなど、どれも素材の持ち味を存分に感じられるものばかりです。
なお、「LUNCHプレート」は事前予約制でのご提供となっています。


「デザートの3点盛りプレート」には、ショコラと自家製アイス、そして季節のタルトが並びます。この日いただいたのは焼きいちごのタルト。火を通すことでいちごの風味がぎゅっと凝縮され、甘みと酸味のバランスが絶妙な一品です。ドリンクには、コーヒーや紅茶、ハーブティーのほか、中国茶も用意されています。
「玄米甘酒パフェ(期間限定)」は、米粉のジンジャークッキー、自家製甘酒と米粉のグラノーラ、なつめ、白キクラゲ、緑豆などが重なり合い、それぞれの個性が溶け合って奥行きのある味わいを生み出しています。薬膳の考え方を取り入れた一品で、「湿気が体にこもりやすい初夏に味わってもらえたら」と三笘さんは話します。

「cafe mocka木果」には、オーガニックなど体にやさしい素材を取り入れたメニューがそろっていますが、その向き合い方はとてもおおらかです。三笘さん自身、オーガニックに強くこだわっているわけではなく、大切にしているのはあくまで素材そのもののおいしさ。家族でジャンクフードを楽しむこともあり、「あまり頑なにならないこと」を大切にしているといいます。


店内を見渡すと、季節の果実の旨味を閉じ込めた自家製シロップの瓶が並び、「LUNCHプレート」の食材でもあるハクサイナバナがさりげなく卓上を彩っています。そうした一つひとつから、食材への愛情が伝わってきます。素材の持ち味を生かしながら、どこかほっとする味わいを目指す料理と、庭の木々を眺めながら過ごす穏やかな時間。「cafe mocka木果」には、肩の力を抜いて過ごせるやさしい空気が流れています。伊勢原周辺の散策やレジャーと合わせて、ランチやティータイムに訪れてみてはいかがでしょうか。
※掲載情報は取材日時点(2026年3月)のものです。
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cafe mocka 木果
国道246号線から住宅地へ入った先に佇む「cafe mocka木果」は、2020年10月にオープンした小さなカフェ。ミモザやロシアンオリーブなど季節の木々に囲まれた庭を抜けて店内に入ると、手作りの家具やアンティークが彩る、ゆったりとした空間が広がります。地元「Irodori農園」の野菜を中心に、シンプルな味付けで素材の持ち味を引き出した「LUNCHプレート」や、自家製アイス、季節のタルトなどのスイーツがそろい、思い思いのひとときを過ごすことができます。