大山と相模湾の眺望も。伊勢原で楽しむ公園ハイキングとみかん狩り体験

澄んだ青空が広がり、すずやかな風がそっと頬をなでる秋は、屋外を歩く心地よさをしみじみ感じる季節。丹沢の麓に広がる「県立いせはら塔の山緑地公園」に出かけて、木漏れ日の中、緑があふれる散策路をのんびり歩いてリフレッシュするのはいかがでしょうか。一息ついたら、ゆるやかな坂道を下って、みかん狩りができる観光農園の「あかざと園」へ。相模湾まで望める開放的なロケーションで、もぎたてのみかんを頬張れば、さわやかな甘みと酸味が旅の疲れを癒やしてくれます。


伊勢原で里山さんぽ。見事な眺望と癒やしの森を満喫する「県立いせはら塔の山緑地公園」

「伊勢原駅北口」から「栗原行」のバスに乗車しておよそ20分。終点の「栗原」バス停で降りて、道路脇に設置された標識を頼りに「県立いせはら塔の山緑地公園」を目指します。公園の入口は3箇所。パークセンターや駐車場があるメイン入口のほか、東入口、西入口がありますが、バス利用の場合は東入口から入るのが便利です。

公式サイトでは「栗原行」バスで「東京農大伊勢原農場前」または「栗原」下車と案内されており、どちらからでもアクセスできますが、今回は終点である「栗原」で降りて向かうことに。なお、「東京農大伊勢原農場前」以降は定期バス自由乗降区間になっています。車内で乗務員に「この先で降りたい」と伝えると、バス停以外の場所でも降ろしてもらえます。

公園の東入口に到着しました。これまで歩いてきた舗装路から土の道へと変わり、ゆるやかな坂道が続きます。入口脇には、けもの除けの鈴やヤマビル対策スプレー、竹製の杖が用意されていて、借りたものは西入口やパークセンターで返却することができます。

標高約203mの塔の山一帯に整備された「県立いせはら塔の山緑地公園」は、クヌギやコナラを中心とした手入れの行き届いた雑木林を心地よく歩きながら、森の澄んだ空気を胸いっぱいに吸い込める憩いの場です。春には若葉が陽光を受けてきらめき、秋には黄金色の落ち葉が舞い降り、頭上からは野鳥のさえずりがやさしく耳に届きます。スタッフが日々巡回して散策路を整えてくれているため道は歩きやすく、急なアップダウンも少ないので、老若男女問わず、気軽に山歩き気分を味わえるのも大きな魅力です。

木漏れ日の中、ゆるやかな上り坂をゆっくり進んで10分ほど経った頃に、展望広場が見えてきました。しっかりした造りの東屋にはベンチが備えられ、伊勢原の街並みや江の島、相模湾、さらに東京タワーや東京スカイツリーまで望めることも。頬をなでる心地よい風を感じながら眺望を楽しんでいると、日常の喧騒がふっと遠のいていくように感じられるでしょう。

展望広場の下には、青々とした芝生の広場があります。ここにレジャーシートを敷いて、お弁当やおやつを食べる光景もよく目にします。たくさんの人がそんな過ごし方をしているからでしょうか。上空にはトンビが旋回している姿も見えました。食べ物を広げる際には、少し注意しておくと安心です。

ひとしきり眺めを楽しんだあとは、駐車場に隣接するパークセンターへ。木造平屋建ての建物の中は、天井が高く、やわらかな光が差し込む開放的な空間が広がっています。園内で出会える野鳥や昆虫、植物の写真が展示されているだけでなく、枝やどんぐりを使った手づくり作品も飾られていて、訪れる人の心を和ませてくれます。

スタッフに声をかけると、その時期ならではの見どころを丁寧に教えてくれるのもうれしいところ。そして、アンケートに回答した方には、園内で剪定された枝木を加工した「塔の山オリジナルキーホルダー」をプレゼントしてくれます。

また、単眼鏡・ルーペ・顕微鏡の“自然観察3点セット”を無料で貸し出しているので、こちらもぜひ利用しましょう。「遊具はないけれど、自然の中で発見が広がる機会になったらいいなと思って」と語るスタッフの言葉が心に残りました。

足元の虫や植物をじっくり観察したり、木の実を拾ったり──。ここでは、自然そのものが “遊び場”です。自由に触ってみて、生き物の不思議に触れる時間が、きっと豊かな感性を育んでくれることでしょう。

パークセンターを出ると、正面に高取山(標高556m)と聖峰(ひじりみね・標高375m)が望めます。「県立いせはら塔の山緑地公園」を拠点に、このふたつの山へ縦走するハイカーも多いのだとか。聖峰の登山口までは徒歩約20分、そこから山頂まではおよそ30分。高取山へはさらに1時間ほど歩けば到達できます。いずれの山頂からも相模平野を一望でき、晴れた日には遠く都心のビル群まで見渡せる絶景が広がります。時間と体力に余裕のある方は、足を延ばしてみてはいかがでしょうか。

来た道を引き返し、次は塔の山の山頂へ向かいます。山頂まではおよそ20分。途中にある見晴台からも、伊勢原の街がよく見えます。

森のしっとりとしたおいしい空気をたっぷり吸い込みながら、やわらかな光が差し込む散策路をゆっくりと進みます。

しばらくすると、頭上を覆っていた木々が途切れ、ふいに空が大きく開けた場所に出ました。ついに山頂に到着です。木のぬくもりを感じるかわいらしい動物のオブジェが迎えてくれ、その背後には大山の雄大な姿が広がっています。周囲には大小さまざまなベンチが設けられており、腰を下ろしてひと息つけば、木々を渡る風の音が心地よく耳に届きます。展望広場の開放感とはまた違い、ここには森に包まれた静けさが漂い、穏やかな時間が流れています。

帰りは、山頂から右手に延びる「森の小径」を下っていきます。道幅はやや細いものの、しっかり整備されていて、危険な箇所もありません。木漏れ日の中を抜けて歩いていくと、およそ15分で西入口に到着します。

「県立いせはら塔の山緑地公園」は、ゆったりと自然を味わうのはもちろん、高取山や聖峰への登山や、古代からこの地を見守る「比々多神社」への参拝と組み合わせて楽しむのもおすすめです。心と体をほぐしながら、伊勢原の豊かな自然に触れる一日を過ごしてみてはいかがでしょうか。


伊勢原の街並みを見下ろす丘の上で、甘酸っぱさが弾ける旬の温州みかんを味わえる「あかざと園」

古くから果樹栽培が盛んな“フルーツの里”伊勢原市では、季節ごとにぶどう、梨、柿など、多彩な果実と出会えます。なかでも秋から冬にかけて主役になるのが、太陽の恵みをたっぷり受けて育つ温州みかんです。市内には90軒ほどの生産農家があり、そのうち10の農園でみかん狩り体験が楽しめます。

「県立いせはら塔の山緑地公園」からアスファルトの坂道を下ること約10分。右手に赤と緑ののぼり旗が揺れ、みかんの木々が連なる風景が見えてきます。そこが、今回ご紹介する「あかざと園」。緑の葉の間からのぞくオレンジ色の実が、太陽の光を浴びてキラキラと輝いています。

伊勢原駅からバスで訪れる場合は、「鶴巻温泉駅行」に乗車して「坪ノ内」バス停で下車するルートがおすすめです。国道沿いを歩いたのち、小道に入れば「あかざと園」の看板が目に入るでしょう。

「この農園の始まりは明治40年。たばこ農家だった祖父が、静岡にみかんの苗木を買いに行った、という記録が残っているんですよ」と3代目園主の飯塚さん。みかん狩りは2時間食べ放題で、大人650円(小学生550円、3歳~未就学児は450円)。10月初旬から12月上旬までの、およそ2カ月間の特別な体験です。予約不要なので、当日の天候を見て気軽に足を運べるのも魅力です。

受付を済ませたら丘陵地のみかん畑へ。広さ約1.2ヘクタールの敷地には20種ほど、800本のみかんの木が植えられています。今回は飯塚さんにお願いし、みかん畑を案内していただくことになりました。

両側の視界が一気に開ける畑への道を歩いていると、飯塚さんが「春になると、このあたりは一面菜の花で埋め尽くされるんですよ」と教えてくれました。鮮やかな黄色のじゅうたんのような風景を思い描きながら坂道を上ること約5分、みかんがたわわに実る木が見えてきました。みかん畑に到着です。

受付で渡されたハサミを手に、いよいよみかん狩りスタート。樹高が低く、女性やお子さまでも実を探しやすいことが魅力です。木の間を縫うように歩いて食べ頃の実を探していくのは、宝探しのようなわくわく感があります。

おいしいみかんの見分け方を尋ねると、飯塚さんは誰にでもわかりやすいポイントを教えてくれました。ひとつは小ぶりであること。そして、軸が細い実を選ぶこと。「軸が太いと皮が厚く、味も淡白になりやすいんです」

また、皮の表面にある「油胞」と呼ばれる小さな粒がきめ細かいものほど、甘さがしっかりと凝縮されているのだそう。2つの実を交互に見ながら説明していただいたものの、素人には正直わからないレベル。実際に食べ比べても、どれも十分においしく感じられます。迷ったら、よく日が当たっていて、つやつやと輝く実を選べば間違いありません。

収穫の際は、「二度切り」するのがポイント。まず果実から5ミリほど離して切り、次にヘタぎりぎりの位置でもう一度カットします。このひと手間を加えることで、ハサミや残った軸でみかんを傷つけるのを防ぐことができます。

「あかざと園」のみかん畑では、「宮本早生」に始まり、「宮川早生」「田口早生」と、早生品種がリレーのように食べ頃を迎えます。どの品種も甘みと酸味のバランスがよく、皮が比較的薄いため手でむきやすいのが特徴です。「同じ品種でも木によって味が違います。太陽の当たり具合でも甘みが変わるので、自分好みの木を探すのも楽しいですよ」と飯塚さん。

せっかくの食べ放題。園内を歩きながらいくつかのみかんを味わってみると、確かに甘さや酸味に微妙な違いが感じられ、食べ比べてみることの面白さを実感します。食べ終わった後の皮は、園内に設置された青いコンテナへ。お土産にしたい場合は、受付でもらったネットに詰められるだけ詰めて、別途1000円を支払えば持ち帰ることもできます(11月以降の持ち帰り料金は850円)。

園内の少し高い場所まで歩いてふと振り返ると、相模平野の大パノラマが視界いっぱいに広がります。そんな爽快な景色を眺めながら頬張るみかんは、格別の味わいでした。

販売の時期は10月から翌年4月頃まで続き、その時期によって実る品種が少しずつ入れ替わります。「あかざと園」では直売や地方発送にも対応しており、問い合わせれば、その時いちばんおいしい旬の品種を送ってもらうことができます。

太陽をたっぷり浴びて輝くみかんを、自分の手で収穫してその場で頬張る——。“フルーツの里”伊勢原を象徴する「あかざと園」で、季節の豊かな味わいを心ゆくまで楽しんでみてはいかがでしょうか。

※掲載情報は取材日時点(2025年10月)のものです。


記事のスポット情報

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神奈川県立いせはら塔の山緑地公園

標高約203mの塔の山一帯に整備された自然豊かな公園です。展望広場のデッキからは伊勢原市街や江の島が、山頂からは大山や聖峰まで一望でき、四季の移ろいとともに変化する風景を楽しめます。パークセンターでは、園内で観察できる野鳥や昆虫、植物の写真のほか、枝やどんぐりを使ったハンドメイド作品があたたかく迎えてくれます。週末にはクラフト教室などの体験イベントも開催。自然とふれあいながら学び、癒される公園です。

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あかざと園

伊勢原の丘陵地に広がる、“フルーツの里”伊勢原を代表するみかん園です。伊勢原の街並みはもちろん、相模湾まで一望できる絶好のロケーション。南向きの斜面に並ぶ木々には、太陽の光をたっぷり浴びたみかんがたわわに実ります。みかん狩りが楽しめるのは、10月初旬から12月上旬までのおよそ2カ月間のみ。園主・飯塚さんが手塩にかけて育てたみかんを、青空の下でじっくり味わう時間は格別です。家族連れにも人気の、秋の味覚スポットです。