厚木・上荻野で夏を満喫!完熟ブルーベリー狩りと古民家カフェ

標高700m前後の山々が連なる「相州アルプス」にほど近い、厚木市北部の上荻野地区。豊かな緑に囲まれたこのエリアは、夏のおでかけにぴったりの場所です。なかでもおすすめなのが、「Blueberry HILLS あつぎ」でのブルーベリー狩り。摘みたてのブルーベリーをその場で味わえる、贅沢な体験が待っています。ブルーベリー狩りのあとには、築250年の古民家をリノベーションしたカフェ「古民家cafe 鐵馬厩」へ。落ち着いた雰囲気の中で、ゆったりとした時間を過ごすのはいかがでしょうか。

丘の上の農園で、驚くほど甘い完熟ブルーベリーを好きなだけ摘んで味わえる「Blueberry HILLS あつぎ」

本厚木駅からバスに揺られること約30分。目的地の「Blueberry HILLS あつぎ」は、愛川町を目前とした上荻野地区の小高い丘の上にあります。「上荻野車庫前」バス停で降りて国道から脇道へ入り、民家を抜けると、やがて森の中へと続くような静かな舗装路に。ちょっとしたハイキング気分が味わえて期待が高まります。

15分ほど歩いた先に、黒いネットで囲まれたブルーベリー農園が見えてきました。「Blueberry HILLS あつぎ」では約80品種、800株のブルーベリーが減農薬で丁寧に育てられています。ブルーベリー狩りは完全予約制で、空きがあれば当日でも開始1時間前まで予約可能。事前に決済まで済ませられるため、当日の受付もスムーズです。

「完熟ブルーベリーのおいしさを、ぜひ味わって欲しくて。市販のものとは、甘さも香りも全然違うんですよ」と話すのは、農園主の渡辺さんです。

ブルーベリーといえば酸味が強いため、生で食べるというより、ジャムやスイーツなどに加工して食べる果物のイメージがあるかもしれません。しかし、スーパーなどで販売されている輸入ブルーベリーの多くは輸送中に果実が傷まないよう、完熟前に早摘みされたもの。ブルーベリーは収穫後に追熟しないため、こうした早摘みの実では本来の甘さを味わうことができないのです。これが、「ブルーベリー=酸っぱい」という印象につながっているのではないでしょうか。

それではさっそく、完熟ブルーベリーを探しにいきましょう。農園内の通路にはシートが敷かれていて、歩きやすくなっています。

ブルーベリーはすべて鉢植えで育てられており、木の高さは大人の身長よりやや低めに揃えられています。これは、鉢で根の成長を制限しつつ、栄養が葉ではなく実に行き渡るようにするための工夫。また、木が伸びすぎると養分が分散してしまうため、適切な高さで剪定することも大切なのだとか。その結果、子どもでも無理なく摘み取ることのできる、ちょうどいい高さに保たれているのです。

それではいざ摘み取り、の前に、渡辺さんから「おいしいブルーベリーの見分け方」を教えてもらいましょう。

もっとも大切なポイントは、実がしっかりと青く色づいていること。緑の実はまだ成長途中なので、そっと見守りましょう。さらに、軸が赤く付け根に黒いリング状の模様が現れているかも、完熟のサインです。これらが揃っているのを確認したら、実を上に軽く持ち上げるようにすると簡単に取れます。

ブルーベリーは大きく分けて3つの系統に分類されます。果実が大きく風味豊かな「ノーザンハイブッシュ系」、酸味と甘みのバランスがとれた「サザンハイブッシュ系」、そして甘みが強い「ラビットアイ系」。それぞれの良さがあるとはわかっていても、「いちばんのおすすめはどれですか?」とつい聞きたくなります。しかし、渡辺さんはあえて明確な答えを示しません。「自分で味わい、発見する楽しさを大切にしてほしい」からです。実際に食べてみて、好みの品種を探す時間こそが、ここでの醍醐味です。

ブルーベリー狩りをもっと楽しむために活用したいのが、受付で販売している渡辺さん考案の「ブルーベリーが10倍おいしくなるノート」です。甘み・酸味・香りのチャートや、品種ごとの特徴がまとめられていて、自由研究に取り組む子どもから大人同士の味覚比べまで、年齢を問わず、ブルーベリーをたっぷり楽しむヒントが満載の一冊です。

青く色づいた果実を探して歩いていると、ちょっと変わった品種に出会うこともあります。たとえば、熟しても赤いままの「ピンクレモネード」。ひと口かじると、フレッシュな酸味のあとにじわっと広がる甘さがクセになる人気の品種です。また、ブラックベリーの木もいくつかあり、プチプチとした独特の食感と凝縮された濃厚な風味が印象的でした。

ブルーベリーは品種によって旬の時期が異なり、6月に食べ頃を迎えるものもあれば、8月になってから旬を迎えるものもあります。「だからひと夏に2度、3度と訪れても、そのたびに違う味わいと出会えるんですよ」と渡辺さんは話します。

ひとしきり摘み取りと味見を満喫したら、ブルーベリー狩りをした人だけがオーダー可能な「Blueberry HILLS あつぎ」特製ドリンクでひと息つきましょう(別料金。完全キャッシュレス制で現金はお使いいただけないのでご注意ください)。

とくに人気なのが、摘みたてのブルーベリーを使った「ブルーベリースムージー」です。収穫用のカゴいっぱいに好きな実を集めたら、スタッフさんに渡して出来上がりを待つだけ。ミキサーの中で凍らせたヨーグルトキューブとブルーベリーが撹拌され、鮮やかな赤紫色に変わっていく様子は、眺めているだけでワクワクします。

もうひとつのおすすめは、「ブルーベリーミルクフラッペ」。神奈川県産のミルクに特製ブルーベリーソースを合わせた一杯は、濃厚なコクとフルーティーな甘さが絶妙に調和し、暑い日にぴったりの〝飲むスイーツ〟です。

農園のシンボルツリーであるキンモクセイの木陰に設けられた「KOKAGEテラス」で、ドリンク片手にのんびり過ごす時間も、この農園ならではの楽しみのひとつ。ブルーベリー狩りの締めくくりに、ゆったりとした時間をお楽しみください。

「Blueberry HILLS あつぎ」を運営する渡辺さんは、もともと広告や出版業界で約20年間営業職として働いていた元会社員。農業の経験はまったくありませんでした。

しかし、仕事の忙しさから心身のバランスを崩し、退職を決意。人生を見つめ直す中で、ふと立ち寄った書店で手に取ったのがブルーベリー栽培の本でした。その内容に心を動かされ、著者の農園を訪ねてみることに。そこで味わった完熟ブルーベリーのあまりのおいしさに衝撃を受け、「この感動をもっと多くの人に届けたい」と決意します。農業大学校(現・かながわ農業アカデミー)に通いながら耕作放棄地を探し、ようやくたどり着いたのが現在の厚木・上荻野にある傾斜地。さまざまな困難を乗り越え、念願のブルーベリー農園を開園するに至りました。

「鉢植え栽培なので、やろうと思えば市街地でもできたけれど、どうせなら自然に囲まれた環境で育てたいと思って。鳥のさえずりを聞きながら木の世話をしていると、本当に気持ちがいいんです」と、渡辺さんは穏やかな笑顔で語ります。

自然豊かな丘の上の農園で、完熟ブルーベリーのフレッシュな甘さに感激――。「Blueberry HILLS あつぎ」には、ブルーベリーの知られざる魅力と、渡辺さんの熱い想いが詰まっています。

※掲載情報は取材日時点(2025年6月)のものです。


歴史ある日本家屋の土間にハーレーダビッドソンが佇む空間でくつろぎのひとときを「古民家cafe鐵馬厩(てつまや)」

厚木・上荻野地区の一角にあるのが、推定築250年の歴史ある建物をリノベーションした「古民家cafe鐵馬厩(てつまや)」です。「上荻野車庫前」バス停のひとつ隣にある「上荻野」を下車したら4分ほど、また「Blueberry HILLS あつぎ」からは徒歩18分ほどで到着します。

のれんをくぐって店内を見渡すと、古民家ならではの落ち着きに包まれた空間が広がり、和とアメリカンのエッセンスが絶妙に散りばめられたインテリアでまとめられています。

入口左手の空間には、元は和室だった部屋を板張りに改装し、ヴィンテージのテーブルと椅子をゆったりと配置。奥にある座敷は、畳や障子といった和の趣をそのまま活かしながら、くつろげる雰囲気を大切にしています。どの席に座っても、思い思いにくつろげるのがうれしいところです。

カウンターを正面にして、右手に広がるのはギャラリースペース。ここには、ご夫妻の愛車であるハーレーダビッドソンが3台並んでいます。実はカフェを営む大森さんご夫妻は、共通の趣味であるハーレーが縁で出会ったのだとか。そして、このスペースはかつて馬を飼育していた厩(うまや)だった場所。アメリカではハーレーを始めバイクのことを「アイアンホース=鉄馬」と呼ぶため、その言葉と「厩」をかけて店名を「鐵馬厩」にしたそうです(「鐵」は「鉄」の旧字)。おふたりのバイク愛を感じるエピソードです。

料理を手がけるのは、和食の料理人として10年の経験を持つご主人の克次さん。毎朝丁寧に仕込む手打ち蕎麦をはじめ、素材の持ち味を活かしたメニューが揃うなか、ひときわ腕前が光るのが「出汁巻玉子定食」です。使用する卵は、丹沢の清らかな水と国産飼料で育った愛川町の「卵菓屋」のもの。砂糖を一切加えず、出汁だけでふんわりと焼き上げた一品は、素材の持ち味と技が際立つ味わいです。高校時代に寿司屋でアルバイトをしていた克次さん、毎日10本もの卵焼きを作っていたのだとか。強火で一気に焼き上げるのが、ふんわりとした食感を生む秘訣だそうです。

デザートやドリンクは妻の陽子さんが担当。食後にぜひ味わっていただきたいのが、オーブンで1時間かけてじっくり焼き上げる「ニューヨークチーズケーキ」です。コクとほどよい酸味のバランスに優れたクリームチーズを厳選し、濃厚でありながら口どけはなめらか。甘さも控えめで、上品な余韻が口の中に広がります。

ケーキを彩る器にもご注目を。盛りつける皿はすべて形やデザインが異なり、目でも楽しませてくれる演出が心をくすぐります。開業時にあえて統一せず、一つひとつ気に入ったデザインのものを少しずつ揃えていったそうで、「夫婦そろってクセのあるユニークな器が好きみたいで、気づいたら結構な数に。収納するのはちょっと大変なんですけどね」と陽子さんは笑います。

チーズケーキは「お土産に持って帰りたい」というリピーターからの声も多く寄せられ、今年からは冷凍での通信販売もスタート。ご自宅でも「鐵馬厩」の味が楽しめると好評です。

そして毎年、このメニューの登場を心待ちにしているファンが多いのが、ふわふわ食感が魅力の「雪氷(ゆきごおり)」。提供されるのはゴールデンウィークから9月末までの、夏季限定メニューです。

一般的なかき氷とは異なり、使用するのは氷ではなくミルク。瞬時に液体を凍らせて削る特殊な機械によって生まれる雪氷は、まるでパウダースノーのようにやわらかく、しかも溶けにくいのが特徴です。器の底にはわらび餅が忍ばせてあり、溶けたシロップと氷がやさしく絡んで、最後の一口までおいしくいただけます。

トッピングには、和菓子店から仕入れるフルーツの生シロップを使用し、食べやすいよう、果肉を薄くスライスして乗せています。果物は月ごとに変わり、取材時はみずみずしい白桃の雪氷が味わえました。そのほかにも、抹茶や黒みつきなこ、キャラメルナッツのフレーバーが用意されています。

雪氷を目当てに、毎年遠方から訪れる方も少なくありません。通年での提供を望む声も多いそうですが、「季節の味は、その時期だけだからこそ価値があると思うので……」と克次さん。夏だけのご褒美として、じっくり堪能するのが良さそうです。

料理人の道を離れ、会社員として平日は仕事、週末はハーレーにまたがる生活を送っていた克次さん。一方で、雨の日も晴れの日も通勤はハーレーという筋金入りのライダーだった陽子さん。そんなふたりが出会い、都内で一緒に暮らすことになり、引っ越し作業中にふたりの荷物から偶然出てきたのは、なんと同じ「カフェ開業」の本。それぞれが密かに思い描いていた夢が、そこで初めて重なりました。

「学生時代、喫茶店でケーキ作りをしていた頃から、自分の好きなレシピはすべてノートに書き留めていました。いつか自分の店を持てたら……と、ぼんやり思い続けてはいたんですが、まさかこんな形で叶うとは」と、陽子さんは当時を懐かしそうに振り返ります。

こうして始まったふたりのカフェ「鐵馬厩」。2016年のオープンから現在まで、ツーリングに出かける時間もなかなか取れないほどの忙しさですが、仕込みや調理の合間を縫って、庭の草木の手入れや畑仕事にも精を出す日々。暮らしそのものを楽しみながら、営業を続けています。

店内を見渡せば、あちこちにふたりの物語と遊び心が感じられます。最後に、克次さんからこんなうれしい一言をいただきました。
「もし店に飾ってあるハーレーが気になったら、ぜひまたがってみてください。遠慮なく声をかけてくださいね!」

※掲載情報は取材日時点(2025年6月)のものです。


記事のスポット情報

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Blueberry HILLS あつぎ

約80品種、800株のブルーベリーが減農薬で丁寧に育てられている観光農園です。ブルーベリーは品種によって旬の時期が異なり、6月に食べ頃を迎えるものもあれば、8月になってから旬を迎えるものも。自分で好きな実を摘んで作る「ブルーベリースムージー」や神奈川県産のミルクに特製ブルーベリーソースを合わせた「ブルーベリーミルクフラッペ」などのドリンクも充実しています。農園のシンボルツリーであるキンモクセイの木陰に設けられた「KOKAGEテラス」で、ドリンク片手にのんびり過ごす時間も、この場所ならではの楽しみのひとつ。ブルーベリー狩りの締めくくりに、ゆったりとした時間をお楽しみください。

INFORMATION

古民家cafe鐵馬厩

推定築250年の歴史ある建物をリノベーションした古民家カフェです。のれんをくぐって店内を見渡すと、古民家ならではの落ち着きに包まれた空間が広がり、和とアメリカンのエッセンスが絶妙に散りばめられたインテリアでまとめられています。看板メニューの「出汁巻玉子定食」は、砂糖を一切加えず、出汁だけでふんわりと焼き上げた一品。素材の持ち味と技が際立つ味わいです。毎朝丁寧に仕込む手打ち蕎麦も人気です。デザートには1時間かけてじっくり焼き上げる「ニューヨークチーズケーキ」や、ふわふわ食感が魅力の期間限定メニュー「雪氷」をどうぞ。