水の豊かさも秦野の魅力!川遊びと名水で淹れた珈琲を楽しむ日帰り旅

関東屈指の登山客を誇る塔ノ岳や鍋割山など表丹沢への玄関口でもある秦野市大倉は、渋沢駅からバスで約15分とアクセスも良好です。その丹沢の麓で、豊かな自然を楽しむことができるのが「神奈川県立秦野戸川公園」です。園内には、塔ノ岳などを源流にもつ水無川が流れており、夏は川遊びスポットとしても人気です。自然の中で身体を存分に動かしたあとは、渋沢駅近くにある自家焙煎のカフェで、秦野の名水仕込みのコーヒーを味わいましょう。

丹沢の自然を満喫しよう!水無川での川遊びやBBQも人気「県立秦野戸川公園」

丹沢の麓 水無川が流れる「秦野戸川公園」

「山と言えば、川」という表現は、忍者が仲間を識別する際に用いた合言葉と言われていますが、自然環境における地形と水系の密接な関連性を端的に示しています。たとえば上高地を流れる梓川や、大山に隣接する大山川(鈴川)は典型例であり、山地に降った降雨は谷沿いに集水され、小規模な沢がまとまって川となり、最終的に山麓へと流下します。

表丹沢の主峰、塔ノ岳の南側には「本谷」や「戸沢」などの沢があります。細い流れが合わさって水無川となり、神奈川県立秦野戸川公園(以下、秦野戸川公園)の中央を流れています。山から注がれる清流は、水温も低めで夏には格好の水遊び場として、人気スポットとなっています。

その秦野戸川公園へのアクセスは、「渋沢駅北口」からバスで約15分。終点の「大倉」バス停付近が、秦野戸川公園の入口となります。広さ36.1haを誇る都市公園であり、水無川の上にかかる「風の吊り橋」がランドマークとして親しまれています。

水無川での川遊び

例年ゴールデンウィーク頃から涼しくなるころまで、公園内に流れる水無川周辺は川遊びを楽しむ人々で賑わいます。梅雨明け後の7月の水無川の水量は例年多めですが、盛夏を迎えると、徐々に水が少なくなる傾向があり、流れも比較的穏やかに。小さなお子さまも、安心して川遊びを楽しむことができます。

河原では、ポップアップ式テントの設置、利用も可能です。熱中症に気をつけて、休憩しながら川遊びを楽しみましょう。自然の川ですので、山間部の降雨などで急に水量が増加する場合があります。公園のアナウンスに注意しながら、楽しみましょう。

風の吊り橋よりも上流は、比較的水量が多く、川に慣れたお子さまの絶好の遊び場になっています。海遊びも楽しいですが、潮や砂のべた付きがない川遊びは、身体を動かしながら、さっぱりとした自然の気持ちのよさを感じることができますね。水無川での楽しいひと時は、お子さまたちの思い出にしっかりと刻まれることでしょう。

着替えや水着が無くても心配はいりません。靴を脱いで、裾をまくって川に入ってみるだけでも、心身がリフレッシュします。河原に下りたら、迷わず川に手や足を入れて、清流の気持ちよさを思い出してみてはいかがでしょうか。

子どもの広場

園内には通年で利用できる施設や設備が整備されています。未就学から小学校低学年向けの遊具が揃う「子どもの広場」やサッカーやキャッチボールなどのボール遊びもできる「多目的グラウンド」は、お子さま連れのファミリーがアクティブに過ごすにはぴったりの遊び場です。

※「多目的グラウンド」は、貸し切り利用がない場合のみ、自由に利用ができます。マナーを守り、譲り合ってご利用ください。

バーベキュー場(要予約・有料)

水無川のほとりには、バーベキュー場も整備されており、事前予約(5日前まで)で、3人以上で利用することができます。利用料金には、食材のほか、鉄板や網などの道具の貸出し料金や紙皿・割り箸が含まれています。食材の追加持ち込みは自由で、飲み物や炭は現地で購入することもできます。夏でも、丹沢から吹く川面の風があり、涼しく感じます。川のせせらぎを聞きながら、お友達やご家族でバーベキューを楽しみましょう。


営業日:3月~11月 土・日・月・祝日
    ゴールデンウィーク及び7月~8月 毎日(12月~2月は休業)
利用時間:3~6月/9~11月 10:30-14:00
     7~8月(2部制)1部10:30-14:00、2部15:00-18:00、通し利用10:30-18:00
予約期間:利用日の30日前~5日前まで
予約受付:インターネット上の専用予約サイトからの受付のみ。電話予約等は対応不可
お問合わせ:営業日や利用料、予約サイト等は秦野戸川公園ホームページにてご確認ください

風の吊り橋

秦野戸川公園のランドマークとして親しまれている風の吊り橋は、全長267mもの長さのある大きな吊り橋です。歩行専用の橋で、揺れはほとんどありません。4mもの幅がある橋の上からは、大山を含む表丹沢の山々が見渡せ、足元には水無川、そして南側には盆地の秦野の街も望むことができます。

橋を渡った先には、「はだの丹沢クライミングパーク」や「山岳スポーツセンター」などのクライミング専門施設や「森の自然観察ゾーン」が整備されています。風の吊り橋は、公園の東西を結ぶ大切な役目も担っています。

公園内には、この橋を渡る複数のウォーキングコースも整備されています。高低差のある園内を歩きながら、丹沢の麓の景色を楽しんでみてはいかがでしょうか。なお、森の自然観察ゾーンの先からは、三ノ塔に繋がる牛首方面への登山道にも通じています。各ウォーキングコースの地図は、パークセンター(後述)で入手することができます。

森の自然観察ゾーン

風の吊り橋を渡り終え、左手の階段を登った先には、「森の自然観察ゾーン」が広がっています。適度に手入れがされた森では、多様な植生や生物を認めることができます。池の近くには野鳥の観察に適した小窓のついた観察用スペースもあり、運が良ければ、オオルリなどの野鳥の姿も見ることが出来るかも。野鳥のさえずりを聞きながら、静かに森林浴も楽しむのも良さそうです。

おおすみ山居

風の吊り橋をわたり、右手方向へ進み、水無川へ下る途中にあるのが「おおすみ山居」です。建物の奥には、「谿風(けいふう)の庭」と名付けられた日本庭園が広がっています。石庭もあり、お庭だけの観賞もできます。庭園のさらに奥には、本格的な茶室があり、茶会などでの貸し切り利用もできます。

休憩所には、土間部分のベンチ席と畳敷きの客席が用意され、本格的なお抹茶だけでなく、コーヒーやオレンジジュースなどもオーダーすることができます。お抹茶に付く、美しい主菓子(おもがし)は、季節ごとに変わるのだそう。冬から春にかけては、水仙や梅などの花、秋にはもみじが染まる景色も見える、この落ち着いた空間で、茶を喫する贅沢な時間を過ごしてはいかがでしょうか。

営業日やメニューなどは、秦野戸川公園おおすみ山居のホームページにてご確認ください。

営業日:毎週木・金・土・日曜日、第2水曜日(年末年始は休業)
営業時間:9:00-16:00(L.O.15:30)

秦野戸川公園パークセンター

「大倉」バス停のロータリーからすぐにあるのがパークセンターです。公園内の案内はもちろんのこと、バーベキュー場や多目的グラウンドの当日の受付に対応しています。館内1階には、丹沢に関連した書籍の閲覧コーナーや県立秦野ビジターセンターが併設されています。定期的に自然体験などのプログラムやイベントも実施しています。詳細は秦野戸川公園公式SNSをご覧ください。

開館時間:9:00-16:30
休館日:年末年始(12/29~1/3)

秦野ビジターセンター

パークセンター1階左手には、ビジターセンターがあり無料で利用することができます。丹沢大山国定公園・県立丹沢大山自然公園の自然を学ぶことができる施設で、丹沢(山塊)の生い立ち、地形や地質的なことから、丹沢に生きる豊かな生物や植物について展示し、紹介しています。常駐している職員の方に、丹沢の自然や最新の山の情報なども質問することができますので、登山前の情報収集にも最適です。企画展はじめ自然教室や登山教室なども開催しています。詳細はビジターセンターホームページをご覧ください。

開館時間:9:00-16:30
休館日:年末年始(12/29~1/3)

秦野戸川公園で楽しめる四季の花

チューリップ(4月上旬ごろ)

八重桜(4月中旬ごろ)

あじさい(6月)

ひまわり(8月)

36.1haという広さを誇る秦野戸川公園内では、四季のお花を楽しむことができます。公園内には所々に休憩ができる屋根付きの東屋やベンチも設置されています。ウォーキングとピクニックをかねて出かけてみてはいかがでしょうか。

春 梅、河津桜、ソメイヨシノ、八重桜、チューリップ(5万本)など
夏 あじさい、オリエンタルリリー、ラベンダー、ひまわりなど
秋 コスモス、紅葉など
冬 水仙、ロウバイなど


小田急線「渋沢駅北口」からバスで15分ほど、アクセスがしやすい秦野戸川公園をご紹介しました。
夏は清流、水無川での川遊び。四季を通じて、広い園内のウォーキングや景色や自然観察を兼ねた散策を楽しむことができます。登山やハイキングよりも手軽に丹沢の自然を感じることができる秦野戸川公園へ、ぜひお出かけください。


水洗いした生豆を自家焙煎!秦野の名水で淹れるコーヒーが人気「珈琲屋 雫月(カフェヤ シズキ)」

秦野戸川公園を満喫したら、バスで渋沢駅北口へ戻り、乾いた喉を潤しに地元で人気のカフェに立ち寄りましょう。南口ロータリーから徒歩3分ほど、國栄稲荷神社前を通り到着するのが「珈琲屋 雫月(カフェヤ シズキ)」です。

お店がある「稲荷神社前」交差点は、江戸からの矢倉沢往還と大山に向かう大山道が交差する要衝でした。立派な道標も遺っており、江戸時代にも、多くの人々が歩いたであろう秦野の街の風情をどことなく感じることができます。そんな場所に、コーヒーが美味しいと評判の珈琲屋 雫月があります。

もともと大のコーヒー好きだった店主の飯塚さんは、コーヒー豆の自家焙煎をしているお店が少ない秦野で、ご自身でローストしたコーヒー豆の販売を決意します。焙煎技術を学びながら、脱サラをし、2023年1月に焙煎所兼カフェとしてお店をオープンしました。

店内に入ると、まず大きな赤いオートバイが目に入ってきます。「走る宝石」と呼ばれた車体は、バイク通でなくとも、その美しい形に見惚れてしまいます。イタリア製のこの希少なバイクを見るために、県外からお客さまが訪れることもあるのだとか。

長期間空き物件だったというこの場所を、ほぼDIYで造作したという店内には、テーブル席とカウンター席、そしてソファー席があり、店舗奥に焙煎スペースがあります。ガラスからの採光もありオレンジと白い壁の店内は、居心地のよい空間が広がっています。

まずは、看板商品のコーヒーをいただきましょう。名水の里として知られる秦野は、丹沢に降り注ぎ土壌深く浸透した雨水を地下に蓄える「天然の水がめ(地下水盆)」的な構造となっています。そのため市内には、沢山の湧き水スポットが点在し、生活の中で使われてきた歴史があります。その豊富な水源をもつ秦野市の水道水は、環境庁が主催する
「名水百選30周年記念 名水百選選抜総選挙」のおいしさ部門
で、1位を獲得しています。

そんな美味しい秦野の名水を使用し、なんと10時間もの時間をかけて抽出されるのが人気メニュー「アイスダッチコーヒー」です。カウンター席の隣に設けてある専用機で、アイスコーヒー用にブレンドした自家焙煎豆に、時間をかけて一滴ずつ浸透させ、水出しで抽出しています。温度を加えないため、油分も出にくく、豆がもつ本来の味を楽しむことができるのだそう。カフェインレス(デカフェ)のアイスダッチコーヒーを選ぶこともできます。

アイスコーヒーは単品でもオーダーできますが、店主手作りの水信玄とセットになった信玄セット(写真右)がお得で、人気とのこと。手作りの水信玄ゼリーは、すっきりとしながらも濃厚な味わいのアイスコーヒーにもよく合います。

軽食的なフードメニューも充実しています。なかでも「厚焼きたまごサンド」は、世代を問わず人気の一品。パン以上の厚さのたまご焼きは、オーダーが入ってから店主自ら調理し、熱々で提供。当初は、パンの耳はカットしていたそうですが、昨今のフードロス問題も鑑み、現在は耳つきのまま提供しているとのこと。パンとたまご焼きの間に塗られた「からしマヨネーズ」は、辛さはなく、ほんのりと香る程度。見た目以上のボリューム感で食べ応えのあるサンドイッチは、ランチやおやつにぴったりですね。

フードメニューは他にもボロネーゼやカルボナーラなどのパスタメニューも。自家製チョコタルトやフレンチトーストなどコーヒーにも合うスイーツも用意されています。

ホットコーヒーは、店内で焙煎されたスペシャリティコーヒー(常時10種類程度のラインナップ)から豆を選んでオーダーすることができます。お店での一番人気は「コスタリカブラックハニー」とのことですが、はじめての場合は、「月替わりスペシャリティコーヒー」をオーダーするのもお薦めです。オーダーが入ると、焙煎した豆を挽き、丁寧にハンドドリップで淹れて提供してくださいます。

波佐見焼のコーヒーカップにたっぷり注がれたコーヒーは、香りと味わいに特徴がありますが、ほのかに甘みを感じ、飲みやすくて冷めても美味しいのが嬉しいです。カウンター席なら、飯塚さんに焙煎や豆の特徴など聞きながら、味わうのも楽しい時間になりそうです。

コーヒーが人気のお店ですが、お子さま連れのお客さまも多いそうで、お子さまには、かき氷(夏季限定)が人気とのこと。もともと、お店からすぐの國栄稲荷神社で遊ぶ地元のお子さんたち、小学生低学年でも買いやすいようにと、ワンコイン(※100円)でかき氷を販売したのがはじまりなのだとか。

シロップは、いちごやレモン、ブルーハワイなど定番が揃っています。秦野の水で作った氷、ほのぼのと懐かしい美味しさを感じます。写真のようにアイスクリームや練乳のトッピング(有料)もできます。

※小学生以下限定の価格です。

自家焙煎したコーヒー豆は、店頭で購入することができます。南米やアフリカ、アジアなどコーヒー豆の産地から、生産する農園も厳選して選定した生豆を焙煎していらっしゃるとのこと。

「新鮮な生豆を秦野の水で3-4回洗って、半乾燥させてから焙煎しています。水洗い後に焙煎するので手間も時間もかかるので、ロースターの中でもやっている人は少ないと思います」と、飯塚さん。水洗いすることで、土やゴミなどを洗い流すことができ、コーヒー本来の純粋な風味を感じることができるのだとか。このような丁寧な焙煎仕事が伝わり、個人のお客さま向けの豆の販売だけでなく、現在はカフェなどへの豆の卸もスタートしているそうです。

お店で飲んで気に入って豆を購入されるお客さまが多いそうですが、豆の特徴や焙煎について聞いていると、別の豆の味わいも試してみたくなるから不思議です。秦野のお水で洗ってから焙煎をするという雫月のコーヒーは、秦野土産にもぴったりですね。

「三日月から夜露の雫(コーヒー)が落ちるようなイメージで、雫月(しずき)という店名にしました。ダッチ(水出し)コーヒーでもハンドドリップでも、店名から丁寧に淹れた美味しいコーヒーを想起してもらえたら、嬉しいです」と、開店から間もなく3年を迎える飯塚さん。「コーヒーの奥深さと、お店に足を運んでくださるお客さまとの会話が楽しく、やりがいを感じています」と、はにかみます。

夜はコーヒーだけでなく、お酒をオーダーされるお客さまも多いのだとか。月が店名にあるとおり、夜時間も居心地が良さそうです。定期的に地元を中心としたミュージシャンのライブも開催されるなど、コーヒーと音楽の文化を育てる場として、秦野の街にしっかりと根付きはじめています。名水の里 秦野のお水で淹れたコーヒーを味わいに、ぜひお出かけください。


※掲載情報は取材日時点(2025年8月)のものです。


記事のスポット情報

INFORMATION

神奈川県立 秦野戸川公園

丹沢の山から流れる水無川の両岸に、緑豊かな秦野戸川公園が広がります。ランドマークは両岸をつなぐ「風の吊り橋」。ひと時も休まず駆け回るキッズはもちろん、園内はバリアフリー対応で車椅子の貸し出しもあり、幅広い世代が楽しめる都市公園です。

INFORMATION

珈琲屋 雫月

スペシャリティコーヒーの生豆を秦野の水で洗い、自家焙煎するロースター兼カフェ。常時10種類程度のスペシャリティコーヒーが揃うコーヒーの専門店です。サンドイッチやパスタなどの軽食やスイーツもあり、丹沢や秦野でのレジャー後のコーヒータイムにぴったり。珈琲豆の購入もできます。