パン好きが通う、素材にこだわる秦野のパン屋さん

神奈川県秦野市にある、近隣住民をはじめ遠方からもパン好きが通う人気のお店を紹介します。渋沢駅からアクセスする「こなkona工房」と秦野駅近くの「パンのくま小屋」です。どちらも手作りと素材にこだわって丁寧に焼き上げたパンが美味しいと評判のお店です。

45種類以上のこだわりの自家培養酵母パンと焼菓子が並ぶ「こなkona工房」

丹沢の麓、豊かな自然を身近に感じることができる町、秦野。ハイキングコースや登山ルートの玄関口となる渋沢駅からは丹沢、大山のくっきりとした美しい山並みを望むことができます。

渋沢駅北口から、正面に表丹沢の山並みを見ながら歩いて30分ほどの静かな住宅街の一角に、国産小麦の自家培養酵母パンと焼菓子の店「こなkona工房」があります。こちらは、「渋沢駅北口」または「秦野駅」からバスでもアクセスすることができます。

町並みにとけこんだ外観のお店は、奥がパン作りの工房、手前が販売スペースとなっており、テーブルや棚の上、ショーケースに所狭しと並ぶパンや焼菓子の数に圧倒されます。
お店の営業は週に一日、土曜日のみですが、10時の開店を待ちわびて、朝早くから常連のお客様が行列をつくるほどの人気店です。

毎週土曜日、店頭に並ぶパンや焼菓子はなんと45種類以上!バゲットなどのハード系パンや食パン、惣菜パンや菓子パン、様々な焼菓子まで豊富な品揃えです。パン製造から販売まで一人で切り盛りする店主の小野寺さん曰く「ご家族で召し上がっていただき、全ての世代に幅広く楽しんでいただけるようなラインアップにしています」とのこと。
こんなにたくさんのパンや焼菓子ですが、16時の閉店を待たずして完売してしまうことも多いとか。

パンは北海道産と地元秦野産の小麦粉を使い、酒粕から起こした酒粕酵母などの自家培養酵母を使用。塩、砂糖、水や油脂、卵や牛乳などの材料も身体に優しいもの、オーガニックのものを厳選し、地産地消にも取り組んでいるそうです。

たっぷりと具材がのった惣菜パンも充実しています。この日は牛すじ煮込みと九条ねぎとしめじのタルティーヌなど8種類ほど。「エビフライをドンとのせてしまった!(店主談)」という、食べ応え抜群のフォカッチャも。

季節のフルーツの彩りが美しいタルティーヌ。その横には自家製粒あんパンなどの菓子パンも並びます。またクッキーなどの焼菓子も各種揃っています。

パンの作り置きはせず、「その日に焼いたものをその日のうちに販売すると決めています」と語る小野寺さん。毎週土曜の販売のために、木曜日から仕込みにかかり、金曜の深夜から土曜の早朝まで夜を徹してパンを焼き続けます。開店前の9時にはすべての商品を並べ終え、店内を整理してお客様をお迎えするのが小野寺さんの毎週のルーティン。

小野寺さんのもう一つの顔はドライフラワー・アーティスト。土曜のパン販売とは別に、毎週木曜には自ら製作したドライフラワーも販売されており、壁や天井にさまざまなリースやスワッグの作品が飾られています。

小学生の頃に出会ったお菓子の本がきっかけでパン作りを始めたという小野寺さん。しかし、調理専門学校や通信教育で料理や製菓を学ぶようになっても、なぜかパンだけは失敗の連続。その挫折もあり、パン作りからは少し遠ざかっていましたが、結婚を期にパン作り再挑戦への意欲がむくむくと湧いてきます。
その後パン教室へ通いはじめ、大手ベーカリーでの2年間のパン製造・販売の実務経験を経て、2011年、生まれ育った秦野でご自身のお店「こなkona工房」をオープンします。当初、売れ行きは芳しくなかったそうですが、地道に地域の人たちとの繋がりを作っていくことで、今ではたくさんの常連のお客様に愛され、支えられる人気のベーカリーとなっています。

種類豊富なパンや焼菓子が揃い、遠方からもパン好きのお客様が来店する「こなkona工房」。丹沢周辺へのハイキングやピクニックの際にぜひお立ち寄りください。

INFORMATION

こなkona工房

丹沢の麓にある、国産小麦の自家培養酵母パンと焼菓子のお店。毎週土曜日のみの営業ながら、バゲットやカンパーニュといったハード系パンや食パン、惣菜パン、フルーツを使ったデザート系パンや菓子パン、さらには様々な焼菓子など毎週45種類以上の商品がずらりと店頭に並びます。


お客様の要望に応え続けて15年超。くまさん似の店主が焼く「パンのくま小屋」

秦野駅の南側に広がる新興住宅地を抜けた先、近くの保育園から園児の賑やかな声も聞こえてくる「今泉あらい湧水公園」の先に、地元の方々に支持される小さなパン屋さんがあります。

店主自らの風貌から名付けた店名は「パンのくま小屋」。北海道の懐かしいお土産品、熊が鮭を咥えている置物をモチーフに熊がバゲットを咥えた看板が目印。よく見るとウインクしている熊がチャーミングです。

店内併設の工房では早朝から大きなオーブンがフル稼働。開店に間に合うよう次々に焼き上げてゆきます。真っ白い生地に北海道産牛乳で炊いたクリームがたっぷり入った「白焼きクリームパン」や、ジャムから手作りした「ブルーベリーとクリームチーズ」をはじめ、さまざまな菓子パンや総菜パンなど、平日でもざっと35種類が売り場に勢ぞろい。週末はさらに多くの種類と数のパンが並びます。

開店の10時を迎えるとお客様が次々に来店され、トマトジュースで仕込んだ「夕焼けメロンパンが個人的には一番好き」と言う男性や、「はだのブランド推進協議会」が地元産原料を使った銘品として認証した「秦野産小麦の塩麹ブレッド」を迷わず手にする女性も。開店から1時間も経たずに売切れになってしまう商品も多いそうです。

食パンやハード系のパンは毎日おおよそお昼前後に焼きあがります。干しブドウがたっぷり入った甘い香り漂う「ぶどう食パン」、山型の形もかわいい「パンドミー」、そして定番の「くま小屋食パン」は、1斤単位で販売され、お好みの厚さにスライスしてもらうこともできます。

定番ロングセラーの「クロックムッシュ」は表面にたっぷりのチーズをのせて軽く焼き上げたホットサンドイッチ。挟まれたハムとパンドミーの生地との相性も抜群で食べ応えも充分!チーズの香りが食欲をそそります。他にも「チーズフランス」や「ピザトマト」、オリジナルソースがたっぷりかかった「コロッケパン」など、子供から大人まで大好きな総菜パンもたくさん用意されています。

くま似を自称する店主の秋保さん。来店されるお客様は買い物と一緒に、秋保さんとのちょっとした会話も楽しまれているようです。

「平日は地元のお客様が中心ですね。中には90歳を超える高齢のお客さんもいらっしゃいますよ。」と、秋保さん。小学生の頃からパンが大好きだったという少年は、サラリーマンを経て、パン屋さんになることを決意。県内の大きなパン屋さんでしっかりと経験を積み、2008年に地元秦野に「パンのくま小屋」を開きました。

現在、JAはだのが運営する産直品販売店「じばさんず」でも、秋保さんの焼き立てのパンを購入できるそうです。

開店以来のスタッフでもあるIさんとお二人で毎日多品種のパン作りを行っており、阿吽の呼吸で次々にパンを焼き上げてゆきます。

開店当時からお客様からのリクエストに応えながら、いろんなパンを焼いてきたといいます。季節感も大切にし、例えば初夏から販売する「そら豆とベーコン」や秋限定の「秦野産栗とココアのベーグル」などは人気商品として根強いファンがいらっしゃるそう。

カンパーニュやバゲットなどハード系のパンを焼き始めたのも、お客様からのリクエストがきっかけ。当初は北海道産小麦を使っていましたが、現在は秦野産小麦「ゆめかおり」を使用。自家培養酵母で生地を長時間発酵させ、こんがりと焼き上げています。素朴な見た目で優しく奥深い風味に「ママ、またこのパン食べたい」と、小さなお子さんのファンもいるほど。

たばこの葉の一大産地であった秦野では、その裏作や転作の作物としてうどん用小麦を栽培していた歴史がありました。途絶えつつあった秦野産小麦を復活させようと秦野市やJAはだのが主導し、2018年頃から地域のパン屋さんやイタリアンレストランとともに秦野産小麦を少しずつ利用し始めたそうです。秋保さんも秦野産小麦でのパン作りに手ごたえを感じ、現在では農家さんから直接仕入れるまでに。玄麦を店内で自家製粉して、挽きたてで「ふすま」たっぷりの全粒粉として一部の商品に使っているそうです。

秦野産小麦を使用しているパンは、店頭に並ぶプライスカードにも表記されており、確認しながら選ぶことができます。香り良く奥行きのある味わいと食物繊維も豊富ということで、地元のお客様をはじめ、パン好きのお客様にも支持されているとのこと。

表丹沢の稜線や弘法山公園(権現山)の展望台も見えるこの場所でお店を開いて15年超。実は旅行が趣味とのことですが「毎日丹沢の山並みを見ているからか、旅先でも山が見えると落ち着くんですよね。」と、まるで森のくまさんのようなことを言う秋保さん。

小麦や果実など地元素材をふんだんに使ったこだわりのパンを味わいに、秦野へぜひお出かけください。

INFORMATION

パンのくま小屋

日々の食事やおやつに食べるパンを求め、お子さんからシニア世代まで地域のお客様が足繁く通う秦野駅近くのパン屋さん。くま似を自称する店主の秋保さんが朝から焼き上げたパンが店頭並びます。秦野産小麦粉を使用したカンパーニュやバゲットなどハード系パンも人気です。