レジャーと一緒に楽しみたい表丹沢の麓めし。秦野で支持される地元の人気食堂

秦野市は、表丹沢をはじめとする豊かな自然、天然の湧き水、そして天然温泉と幅広いレジャースポットが揃っています。その秦野市で、定食が美味しいと評判の二つの食堂をご紹介します。鶴巻温泉駅近くの「白髭食堂」と渋沢駅からアクセスする「みや古食堂」です。どちらも味が支持される人気のお店です。

昔懐かしい洋食や地元産のジビエを気軽に「定食」で楽しめる「白髭食堂」

明治時代より温泉地として親しまれてきた鶴巻温泉は、カルシウム含有量が日本有数の名湯で、都心からのアクセスも電車で1時間ほどの人気のスポットです。富士山の絶景が楽しめる弘法山公園などへのハイキングルートにもなっているので、登山や自然散策とともに日帰り温泉を楽しむ人たちの絶好の行楽地となっています。
玄関口となる鶴巻温泉駅北口のバスロータリー近くに店を構えるのが「白髭食堂」です。本格的洋食メニューや地元産のジビエを使った料理を気軽に味わえる食堂で、週末にはハイキングや温泉の行き帰りに立ち寄るお客さまが行列をつくるほどの人気店です。

店内は、まるで山小屋のような雰囲気で、お一人でも気軽に利用しやすい席がずらりと並んでいます。壁に貼られたたくさんのメニューが食欲をそそります。

お店のコンセプトは「大人のお子さまランチ」。唐揚げ、トンカツなどの揚げ物やカレーを中心にしたメニューは、昔懐かしいデパートの大食堂を思わせるラインアップですが、それぞれが素材にこだわり、一つひとつ丁寧につくられたクオリティの高い一品です。

一番の人気メニューが「トリオプレート」(上の写真)で国産若鶏のタルタルチキン、唐揚げ(塩胡椒味とにんにく生姜醤油味)、チキンカツが盛り合わせになった一皿です。揚げ方と味付けを変えることで、鶏もも肉の柔らかくジューシーな風味を飽きることなく堪能できます。

「ここの揚げ物は軽くて、胃にもたれないね」と、年配のお客さまからもよく言われるそうです。その「軽さ」の秘密は、ラードと白絞油(しらしめゆ)、香りのよい鶏油(チーユ)を独自にブレンドした揚げ油を毎日フレッシュな状態で使用すること。軽いのにジューシーな揚げ物が、若者からお年寄りまで幅広い層のお客さまに支持されています。

「定食がメインの店なので、お米は美味しいものにこだわっています」と店主の平田さん。お米はすべて福島県南会津産コシヒカリ(一等米)で、地元の生産者さんから直接玄米で仕入れ、冷蔵保存したものを、店の販売予定数に合わせて毎週精米し、炊いているそうです。ふっくらツヤツヤで、冷めてもしっとりしているご飯は、テイクアウトのお弁当でも美味しくいただけます。

定食に添えられるサラダは千切りのキャベツとレタスに胡麻ドレッシングがかかったもの。カップに入った汁物はコンソメスープや味噌汁などの日替わりで、この日は牛蒡や人参が入ったお味噌汁でした。

揚げ物のお弁当やカレーなど20種類以上あるテイクアウトメニューも魅力で、駅からすぐの場所ということもあり、お客さまの4割ほどがテイクアウトを利用されているそうです。

鶴巻温泉周辺は古くからイノシシの肉を使った「しし鍋」が地元温泉旅館の名物料理だったそうです。現在では、地元産の鮮度の良いイノシシやシカの精肉が秦野市内の飲食店を中心に「丹沢ジビエ」、「秦野ジビエ」として提供されています。
丹沢の名水と森の恵みで育ったジビエは、高たんぱく低カロリーでミネラルや鉄分なども豊富。ヘルシーで自然そのままの味わいを楽しめると、近年人気が高まっています。

白髭食堂では、年間を通して丹沢ジビエのイノシシ肉を使った、ひとくちカツやメンチカツ、カレーをいただくことができます。
お店のイチオシという「ジビエたれカツごはん」は、イノシシのもも肉のひとくちカツを甘口醤油だれに通してどんぶりご飯にのせた一品。気になる匂いやクセもなく適度な弾力がある赤身のカツは、噛みしめると豚肉よりも濃厚な旨味を感じられます。下に敷かれた海苔の香り、トッピングされた新生姜と獅子唐もよいアクセントになっています。

「オリジナルカレー」は、大量の玉ねぎを飴色になるまで3時間ほど炒め、牛すじ、豚肉、鶏肉で取った出汁とともに2日間煮込んだもので、コクと旨味がたっぷり。スパイスの調合もトッピングの揚げ物に合うように工夫し、独自にブレンドしているそうです。大ぶりなブラックタイガーのフライが2尾のった「エビフライカレー」は、サクサクした生パン粉の食感とふっくらした海老の甘みがスパイシーなカレーによく合い、絶品です。

デザートには、シンプルに砂糖、牛乳、卵とバニラエッセンスを使い、オーブンでじっくり3時間かけて焼き上げた「昭和ぷりん」がオススメ。ちょっと固めの食感と、添えられた生クリーム、ウェハースがいかにも昭和のデザート風で隠れたファンも多いようです。

(店名の由来になった)白い髭がお似合いの店主の平田さんは、神奈川県大和市のご出身。学校を卒業されて以来、調理の道一筋に歩いてこられたベテラン料理人です。ご両親が営むとんかつ料理店や居酒屋をはじめ、中国料理店、創作和食料理店等で修業を重ね、2020年4月に、「白髭食堂」をオープンしました。

接客を担当する夫人とお二人で切り盛りするお店は、開業当初、コロナ禍の影響により店内で飲食を提供できず、テイクアウトだけの営業を強いられたそうです。
その後、規制が緩和され、店内サービスが可能となると、懐かしい洋食やジビエ料理が気軽に食べられるお店ということで、ハイキングや日帰り温泉のお客さまだけでなく、近隣の方や学生のお客さまの間でも評判のお店となりました。

「うちは洋食店ではありません。町の食堂です。」と語る平田さん。いろいろなジャンルの料理店で習得された確かな技術による食堂メニューは、主菜はもちろん、副菜の小鉢や出汁の効いた汁物まで、ひと手間掛けたプロの味でお客さまを魅了しています。

鶴巻温泉にいらした際は、白髭食堂の「大人のお子さまランチ」や地元産のジビエ料理を召し上がってみたら、いかがでしょうか?

※「フリーパス優待施設」です。「丹沢・大山フリーパス」を提示するとソフトドリンク1杯の優待を受けることができます。
※掲載情報は取材日時点(2025年9月)のものです。

INFORMATION

白髭食堂

鶴巻温泉駅北口からすぐの「大人のお子さまランチ」をコンセプトにした食堂。ハイキングや日帰り温泉の行き帰りに気軽に立ち寄れて、トンカツや唐揚げなど昔懐かしい洋食や丹沢産ジビエ(イノシシ)を使ったカツやカレーが楽しめます。テイクアウトメニューも充実しています。


家庭的な味付けで量もたっぷり!名物 鉄板焼きが評判の老舗ドライブイン「みや古食堂」

1927(昭和2)年の小田急線開通を皮切りに、1956(昭和31)年に国道246号線、1969(昭和44)年には東名高速道路と、秦野市は主要交通インフラが早くから整備されてきました。中でも、国道246号線のルーツは、鎌倉時代に整備された東海道よりも古く、奈良・平安時代半ばには関東と畿内を結ぶ「矢倉沢住環(やぐらさわおうかん)」として、人と物資が往来する街道として機能してきました。

渋沢駅南口近くの國栄稲荷神社前には、大山道・矢倉沢住環の石碑があり、この交差点から曲松、萩が丘、そして千村(ちむら)へと続く通りが、往時の矢倉沢往還です。古くは茶屋が軒を連ね、近くには博打場もあったと伝わります。頭高山の麓には、当時の雰囲気を宿す道筋もあり、沓掛(くつかけ)の不動尊が静かに出迎えてくれます。

矢倉沢往還をなぞるように整備された国道246号線、三宅坂を起点に静岡県沼津に伸びる通称ニーヨンロクと呼ばれるこの国道は、秦野市の最西部に差し掛かると、表丹沢の塔ノ岳、鍋割山に源流をもつ「四十八瀬川」沿いを走り、一部は小田急線とも並走しています。このロードサイドで、間もなく開店から60年を迎えるのが「みや古食堂」です。緩やかな坂道の途中、トラックの休憩用駐車場の奥にある建物です。懐かしさを覚えるドライブインらしい外観で、見落とすことはありません。渋沢駅から歩いて45分ほどで到着します。

店内には、塗装や電飾などでデコレーションされた大型トラックの写真フレームが何枚も飾られており、目を引きます。半世紀ほど前にヒットした邦画「トラック野郎」にも登場しそうな昭和の食堂らしい雰囲気で、どことなく懐かしさを覚えます。

1967(昭和42)年の開店に開店したみや古食堂は、全国を股にかけて走る長距離ドライバーをはじめ、近隣で働く人々の食事のお店として、愛され続けてきました。開店から54年を迎えた2021年、残念ながら先代の店主様が逝去されたため、閉店状態となってしまいます。以前から足繁く通っていた地元の常連客であった現オーナーがお店を譲り受け、みや古食堂の暖簾を引き継ぎました。2021年末にリニューアルオープンし、先代の味を再現しつつ、新しいメニューも取り揃えて現在に至っています。

さっそくいただきましょう。看板メニューの「国産豚の鉄板焼き」は、先代から変わらず一番人気でボリューム満点の一品です。もやしとキャベツ、そしてタレで味付けされた豚コマが大きな鉄板に盛られ、熱々で提供されます。

実は「国産豚の鉄板焼き」の肝となるタレのレシピは残されていなかったそうですが、奇跡的に残っていた手作りのタレを頼りに、原料を見当し、調合を何度も見直して、同じ味を再現することに成功。「以前からのお客さまからも、味が変わったというお声はありません」と、お店を切り盛りする店長の志賀さんは胸を張ります。蘇った秘伝のタレとして、みや古食堂の味として守られています。

その味わいは、ほんのりと甘さを感じさせながらも、コクを感じる風味が絶品です。市販のタレよりも、マイルドで家庭的な味わいは、付け合わせの野菜はもちろんのこと、ごはんにもよく合います。添えられた擦りおろしたニンニクを混ぜると、パンチ力が一気にマシマシに!この力強い味変を楽しみにしている常連のお客さまも多いのだそう。

鉄板焼きのレパートリーは、タレ味以外に「辛みそ味」、「ねぎ塩味」、「塩にんにく味」と全4種となっています。中でも、タレ味と肩を並べるほど人気となっているのが「塩にんにく味」とのこと。シンプルな塩味にガツンと効いたニンニクとピリ辛の風味が、男性のお客さまを中心に、支持されているそうです。

平日は、おもに長距離ドライバーや近隣で力仕事に勤しむリピーターのお客さまが多いとのことで、鉄板焼き以外のメニューも充実しています。見た目にもインパクトがある「ジャンボたらカツ定食」も人気の一品です。その名の通り20センチほどの大きなタラのカツが、千切りのキャベツと一緒に提供されます。熱々でふっくらと揚がったタラの身が、香ばしい衣と合わさり、白身魚の旨味を濃厚に感じごはんが進みます。

他にも、鶏の唐揚げが味わいと大きさ(!)で評判なのだとか。単品としても注文できるので、たくさん食べたい日には定食に追加オーダーしても良さそうです。

定食類には、ごはんとお味噌汁と漬物が付きます。ごはんは、普通盛りでなんと300gも!一般的には大盛の分量ですので、小食の方は、遠慮なく「小盛(200g)」をオーダーしましょう。特盛やメガという漫画のような量のごはんもオーダーすることができます。食べきれる自信のある方は、挑戦してみてはいかがでしょうか。

他にも、かつ丼などの丼ものやカレーなどいろんなメニューが揃っています。

土曜日には、平日とは打って変わって、ご家族連れやお友達連れのお客さまが多く、さもファミレスを訪れるように、みや古食堂を利用されるのだとか。女性やお子さまに特に人気なのが麺類で、店内仕込みのラーメンスープで作るシンプルな「塩ラーメン(写真上)」をはじめ、神奈川県発祥の熱々の餡がのった「サンマーメン」も評判とのこと。どこか懐かしい味わいのラーメンとして、支持されているそうです。

店長として現在お店を任されているのが、地元秦野市ご出身の志賀さんです。まだ二十代半ばながら、厳しい練習に耐えた元球児らしく、仕込みにも手を抜かず、日々厨房で鍋をふり、従業員の皆さんと力を合わせ営業に臨んでいます。

「中学の頃から料理をするのが好きで、部活から帰宅すると、家にある材料を使って、自分で作っていました。みや古食堂はお客さんとして利用していました。食堂らしい普遍的な美味しさをしっかりと提供できるように日々仕事に打ち込んでいます」と、球児の面影をのこす爽やかな笑顔で言います。

各種定食をはじめ、丼もの、麺類と多様なメニューを提供し、お客さまの舌と胃袋を満足させる新生みや古食堂。矢倉沢往還をトレースする古道歩きや頭高山ハイキングと合わせて立ち寄ってみてはいかがでしょうか。満腹でお店をあとにすると、店頭からは美しい大山の頂が見えることも。1,000年前と変わらない景色がここにはあります。

※掲載情報は取材日時点(2025年10月)のものです。

INFORMATION

みや古食堂

国道246号線沿いにある老舗ドライブイン。先代から変わらない味が評判の「国産豚の鉄板焼き」をはじめ、各種定食や丼もの、麺類など沢山のメニューが揃う食堂です。家庭的な味付けとたっぷりのボリュームが支持されています。店舗裏には鮎も泳ぐ四十八瀬川が流れ、川と並走するように小田急線も走っています。