令和版「大山詣り」のススメ 大山ケーブルカーに乗って出発進行!
「丹沢大山国定公園」の東端に位置する大山は、四季を問わず野趣あふれ、標高1,252mの山頂から緩やかに広がる山容は、富士山と並び各地から崇められてきました。歴史は古く、万葉集東歌に詠まれ、江戸時代に大流行した大山詣りの様子も浮世絵に多く描かれています。
大山へは伊勢原駅からバスで約30分。レトロな雰囲気のこま参道を歩き大山ケーブルカーで僅か6分、一気に標高700m近い大山阿夫利神社下社までアクセスすることができます。
今回は、2025年に開通60周年を迎える大山ケーブルカーを利用して手軽に楽しむことができる大山の魅力をご紹介します。
伊勢原駅からバスで約30分
大山の麓で散策しよう「こま参道」と「茶湯寺」
伊勢原駅からバスで約30分、大山の麓にある「大山ケーブル」バス停に到着します。ここから大山ケーブルカーの始発駅「大山ケーブル駅」までは、徒歩で約15分。鈴川(大山川)の流れる音を聞きながら、昭和レトロな雰囲気漂うこま参道を歩きましょう。
大山詣りの常連である講(グループ)や個人名が彫られた玉垣が並ぶのは、大山参拝の先導師、御師が営む宿坊です。今も食事の提供や宿として営業を続けています。名物の「大山とうふ」をはじめ軽食を振る舞う茶屋や土産物屋も軒を連ねています。縁起物として飾ってよし遊んでよしの「大山こま」は、江戸時代から人気のお土産で、ほかにも地場産の食品やお菓子などが並びます。
こま参道途中にある石塔を目印に、左折すると「茶湯寺(ちゃとうでら)」があります。鈴川を越え石段を登った先に境内があり、朝夕と陽があたる石段の右手には、石仏やお地蔵様がずらり並んでいます。
大山の麓で900年を超える歴史がある古刹で、死者の霊を百一日の茶湯で供養する茶湯供養(追善供養)の寺として知られています。
供養に行くと死者に似た人に会えるとも伝えられており、最近ではご友人やお世話になった先生や先輩を偲び、お参りに訪れる方も多いのだとか。本堂には、ご本尊の釈迦涅槃像が祀られています。
境内奥に佇むそれぞれ愛らしい表情を浮かべる六体の「わらべじぞう」は、ひと時嫌なことを忘れさせてくださる御利益があるのだそう。大山の行き帰りに立ち寄って、手を合わせてみてはいかがでしょうか。
秋には観音像の周りに咲く藤袴(フジバカマ)の蜜を求めてやってくる、珍しいアサギマダラを見かけることも。美しい蝶は大切な故人が姿を変えて現れたのかもしれません。
それでは、こま参道に戻って「大山ケーブル駅」まで、もうひと歩きしましょう。
※茶湯寺は供養のためのお寺です。静かにお参りください。
事前に知っておくとお得で安心!大山ケーブルカーご乗車案内
大山ケーブルカーは「大山ケーブル駅」を出発し、中間にある「大山寺駅」(途中駅)を経て、「阿夫利神社駅」(終点)まで約6分で到着します。毎日9:00の始発から毎時20分間隔で運行。平日は16:30発、土日祝日は17:00発が最終です。片道だけの利用はもちろん、「大山寺駅」での乗り降りもできます。
INFORMATION
2024年 大山ケーブルカー夜景運転
大山阿夫利神社下社と大山寺の紅葉が見頃を迎える下記日程は、日没後に紅葉のライトアップも行われます。期間中は、大山ケーブルカーの夜景運転が実施されます。普段とは異なる夜の大山にお出かけください。
2024年11月20日(水)~12月1日(日) 平日19:00まで 土休日20:00まで
出発1分前に乗車締切。時間に余裕をもって到着しましょう
乗車券は駅窓口にて購入できます。交通系ICのほかクレジットカードも利用できます。週末やハイシーズンには、窓口・乗り場ともに混み合うことがあり、乗車待ちとなる場合もあります。時間に余裕をもってお出かけください。
丹沢・大山フリーパスAキップを事前に購入しておくと、窓口に並ぶ時間を省けるのでおすすめです。丹沢・大山フリーパスは小田急線各駅券売機で購入できます。
ペット同伴での大山ケーブルの利用について
ペットとの乗車の際にはペット用ケース・キャリーバック(布製可)の利用が必要です。またペットの乗車には手回り品料金として片道220円、往復440円を別途お支払いください。
大山ケーブルカーに乗車しよう!「大山ケーブル駅」
こま参道を登り終えたところ、標高約400m付近にあるのが大山ケーブルカーの始発駅「大山ケーブル駅」です。乗車券を販売する窓口、待合スペース、トイレのほかに、大山ケーブルカーオリジナルグッズや地域の人気店が作るお菓子などのお土産を購入できる売店も併設されています。
窓口の右手にあるのが売店です。営業時間は運行時間と同じで毎日9:00から平日は16:30まで。土休日は17:00までの営業です。
冷蔵庫には、伊勢原の人気店「パスティッチェリア ラッテ」の洋菓子が並びます。濃厚なチョコレート風味の「フォンダン・オ・ペカン」は売店で一番人気。「大山バウム」もリピートされる方が多いそうです。
他では購入できないタオルやキーホルダーなど大山ケーブルカーのオリジナルグッズも販売しています。自然豊かな大山にぴったりの、昆虫の「タガメ」エキスが入った「タガメサイダー」など珍しい商品も並んでいます。
改札でキップを提示し、乗車しましょう。進行方向の最前列に座るのは、運転士ではなく実は車掌さんです(理由は後述します!)。
前面の窓越しに見える線路中央には、一定の間隔で滑車が並んでおり、直径約3センチのワイヤーケーブルの軌道となっていることがわかります。大山寺駅が近づくにつれ、下りのケーブルカーが接近してくる様子も見ることができます。
「大山ケーブル駅」を出発してわずか2分、あっという間に「大山寺駅」に到着します。
「大山ケーブル駅」
乗車券販売:あり
始発:9:00(以降20分間隔)
最終:平日 16:30、土休日 17:00
売店:あり
トイレ:あり
日本ではここだけ!ケーブルカーが並ぶ途中駅
「大山寺駅」と奈良時代から続く名刹「大山寺」
「大山寺駅」は、「大山ケーブル駅」と「阿夫利神社駅」のちょうど中間に位置しています。多くの区間が単線である大山ケーブルカーですが、「大山寺駅」付近で複線となり、昇降の車両がすれ違う仕組みになっています。1番ホームには必ず1号車(ゴールド)、2番ホームには必ず2号車(シルバー)が停車します。
「大山寺駅」のように車両がすれ違う場所に中間駅があるのは、日本では大山ケーブルカーだけ。ぜひ、途中下車して、車両が並ぶ様子をじっくりと楽しんでみてはいかがでしょうか。
ご覧の通り「大山寺駅」は斜面にあるため、ホームも階段になっています。段差ごとにベンチもあって趣きがあります。レールの中央にある太いワイヤーロープが動き出し、滑車がカラカラカラと鳴りはじめると、間もなくケーブルカーがやってきます。
大山寺や女坂へは1番線ホーム横からアクセスできます。なお、「大山寺駅」から男坂へはアクセスできませんのでご注意ください。
「大山寺駅」から大山寺方面に歩きはじめてすぐ、右側の階段を登ると「幸福の鐘」があります。3回鳴らすと良いことや縁結びの御利益があるそう。視線を上げると、江の島方面への展望が開けています。
「大山寺駅」から徒歩約3分で大山寺と女坂に到着します。大山寺の参道(階段)は、もみじの葉に覆われ、初夏から晩夏にかけては緑が美しく、秋には真っ赤に染まり県内有数の紅葉スポットとなります。本堂前からは江の島をはじめ三浦半島まで見渡すことができ、参拝と小休止にもぴったりのスポットにもなっています。
東大寺の初代別当であった良弁僧正が755年に開山した大山寺。その後も、弘法大師空海らが住職を務めた歴史ある名刹です。鎌倉時代や江戸時代にも天皇や幕府から保護を受け、様々な役割を担った坂東(関東)を代表する重要な寺院でした。明治以前は、現在の大山阿夫利神社下社があった場所に本堂があり、大山詣りに訪れる人々の目的地でもありました。
御開帳日にはご本尊の「鉄造不動明王」を参拝することができます(内拝協力金400円。中学生以下無料)。ご本尊は国内でも珍しい鉄製の仏像で、木製や銅製とは異なる表面加工の荒々しさが、かえってご不動さまの力強さを宿しているようにも見受けられます。私たちの煩悩や弱さを鎮めるためという不動明王さまの強い表情を間近に拝むと、気が引き締まるようです。
本堂内では、御朱印をはじめ、絵馬や護摩焚きのお札を求めることができます。大山詣りに江戸からはるばる持参したという「納め太刀」を模した大山寺ならではのユニークな御守りも人気とのこと。大山寺は、いつの時代も、大山に入るなら訪れたい場所です。
大山寺から再び「大山寺駅」へ戻り、終点の「阿夫利神社駅」へ向かいましょう。「大山寺駅」でも毎時20分間隔で上り、下りのケーブルカーに乗車することができます。「大山寺駅」にはトイレはありません。大山寺本堂から女坂を上ってすぐ左手にある公衆トイレをご利用ください。
「大山寺駅」
乗車券販売:なし(車掌対応)
始発:9:02(以降20分間隔)
最終:平日 16:32、土休日 17:02
売店:なし
トイレ:なし
天空近い「阿夫利神社駅」と明治初期創業の老舗茶屋「さくらや」
大山の中腹、標高678mにあるのが「阿夫利神社駅」です。ケーブルカーを降りると、麓とは少し違う山の空気を感じます。振り返ると、相模原の平野とその先には相模湾も。ホームの先には、ワイヤーロープと繋がる大きな滑車を見ることができます!
駅名の通り、ここは大山阿夫利神社下社への最寄り駅です。
標高1,252mの大山の中腹に位置し、勾配のある斜面にホームがあります。駅内にトイレはありませんので、男坂女坂の分岐手前の公衆トイレをご利用ください。
改札を出て少し歩き、左手側を見上げると、大きな鳥居が見えます。この階段を登ると、大山阿夫利神社下社の本殿があり、左手奥には、山頂へ向かう登山道の入口「登拝門」があります。
2020年版の「ミシュラン・グリーンガイド・ジャポン」では、「大山阿夫利神社下社からの眺望」が二つ星を獲得しています。参拝と合わせて、三浦半島から伊豆半島まで広がる雄大な景色も楽しみましょう。晩秋には周辺の木々が紅葉し、夜間はライトアップも行われます。(24年は11月20日~12月1日まで)
下社への階段の下、阿夫利神社駅から歩いてすぐの広場にあるのが茶屋「さくらや」です。明治はじめ頃は、阿夫利神社下社境内に植わっていた桜の木の下にお店があり、それが店名の由来になったとのこと。
大山ケーブルカーが運休するような荒天でない限り、雪が降るような日でも毎日10時頃から夕方16時頃まで年中無休で営業し、大山を訪れる人々の休憩処として重宝されています。軒先で焼く昔ながらの串刺しのお団子やソフトクリームに惹かれ来店される方も多く、気軽に立ち寄れる雰囲気は、昔から変わらない茶屋らしさを感じます。
現在お店を切り盛りするのは4代目の西村さん。さくらやに嫁いで54年、昭和、平成、令和とご主人亡きあとはお子さまらも一緒にお店を守り大山の変化を見届けています。「昔は歩いて通ったけど、今はケーブルカーで通勤してるよ」とはにかむ西村さん。居心地の良い軒下の小上がりやテーブル席で、母親と会話するかのように西村さんとの会話を楽しみに来店される常連さんが多いというのも頷けます。
窓から見えるブナの葉が美しく見える店内席も広く、リラックスできる空間です。寒い季節には暖をとりながら、ゆっくりと食事を楽しむことができます。
「ラーメン」のぼり旗を、暖簾のように横にして店頭に掲げ、間違って裏返しのままにしていたところ、「ルーメソ」と読める暖簾がSNSで話題に。そのラーメン目当てにやってくるお客さんも多く、味噌や醤油ラーメンだけでなく、茶屋らしい山菜ラーメンも人気とのこと。たしかに、醤油スープにたっぷりの山菜と中華麺がよく合います。
寒い季節に人気なのがロングセラーという「おでん」と「とん汁」。店頭の湯気立つおでん鍋から盛り付けられたネタは味が染み込んで色も濃いめ。「うちのおでんは、一味で食べるの」とのことで、一味をひとふり。ピリッとした唐辛子が熱々のこんにゃくによく合います。味噌仕立てのとん汁も具沢山なのが嬉しいです。
「大山さくらや」ラベルのワンカップの日本酒は、七沢の黄金井酒造製。お土産にも良さそうですね。
江戸時代の大山詣り全盛の頃から多くの参拝者がこの辺りで休憩し、胃袋を満たしたことでしょう。空気のよい大山中腹の老舗茶屋での食事を兼ねたひと休み。時の流れがゆっくりと感じるような贅沢なひと時となること間違いありません。
大山阿夫利神社下社参拝や大山登山の際にはぜひご利用ください。
参拝や登山の復路も大山ケーブルカーが便利です。下り方面の車両先頭側は上方にも視界が開けるような大きな窓となっています。視界を遮る架線がないため、景色を存分に楽しむことができる前方の展望席がお勧めです。
「阿夫利神社駅」
乗車券販売:あり
始発:9:00(以降20分間隔)
最終:平日 16:30、土休日 17:00
売店:なし
トイレ:なし(広場下の公衆トイレをご利用ください)
知って乗ると楽しさ倍増!大山ケーブルカーの仕組み
「大山ケーブル駅」と「阿夫利神社駅」間の標高差は約280m。秒速3.5km(時速12.6km)のスピードで最大傾斜25度、約800mの路線を約6分で運行しています。急勾配の斜面に設置されたレールの上を、2つのケーブルカーが同時に昇降し、中間駅の「大山寺駅」ですれ違います。
大山ケーブルカーの動く仕組みは、いわゆる「つるべ式(交走式)」といって、頂点の滑車にかかった一本のワイヤーロープの両端に2つの車両が繋がっています。
○2015年導入の新型車両の特徴
現在運行されるブリリアントグリーン色の2台の車両は、2015年10月に運転開始された新型です。同年7月に引退した先代車両から乗車定員数を減らし、安全性の向上と乗り心地の改善を実現しています。上り方向と下り方向で異なる車両前面の意匠を採用し、車内空間の上質化(大型窓の採用、高い天井、LED間接照明の採用ほか)と車両内階段のステップ高の改善などバリアフリーにも配慮された車両に進化しました。2016年にはグッドデザイン賞も受賞しています。
○大山ケーブルカーの運転席とモーターは阿夫利神社駅に
一方で、先代の車両を支えてきたレールと接する台車部分やワイヤーロープを巻き取る大きな滑車、動力となるモーターを含む巻上機などの主要な機械類の多くは、現在も現役で活躍し続けています。
例えば上の写真。大山ケーブルカーの運転室なのですが、現代的なデジタル計器はなく、目盛りによる表示や物理的なボタンとハンドルが並ぶ操作盤のような運転装置になっています。そして、運転席からは停車する車両が間近に見えます。
冒頭でお伝えした通り、大山ケーブルカーには必ず1名以上の車掌が乗車しますが、実は運転士は乗車しません。
その理由は、大山ケーブルカーの動く仕組み、つるべ式と関係があります。1号車と2号車は一本のワイヤーケーブルで繋がっているため、2台の車両は常に同時に発車し、同時に停車します。車両ごとに運転する必要がなく、2つの車両の運転を同時に行うため、車内ではなく、ある場所からリモートで運転を行っています。
その場所(運転室)は、なんと阿夫利神社駅の駅舎上部。運転室の下には動力となるモーターやワイヤーロープを制御する巻上機などが設置されている機械室になっています。
運転士が行う操作も、電子制御により半ば自動で運行される現代的な車両運行システムとは異なり、各メーター類の目盛りを目視で確認しながら、モーターをはじめ減速機やブレーキを手動で操り車両を運転しています。まさに「操縦」という言葉がしっくりくるこの運転方法は、1965年の創業時から続いているそうです。
○2台の車両に繋がるワイヤーロープは創業以来活躍する滑車(索輪)で制御
運転室の真下にあるのが、大山ケーブルカーの心臓部、巻上機がある機械室です。1本のワイヤーケーブルの両端に繋がる2つの車両は、文字通りこの機械で巻き上げられています。2015年の新型車両への切り替え時に、一部の機械類や電気関連の刷新やメンテナンスも実施されたそうですが、大きな2つの滑車(索輪)を含む巻上機は、1965年の大山ケーブルカーの創業以来、現在も稼働し続けているそうです。
約6分間の運行中は、機械室では勢いよく回転する2つの滑車、それを動かすモーターや停車時に稼働する減速機とブレーキなどの動作音が発生し、振動し続けます。大山ケーブルカーに乗っている時には、まさか運転士さんが阿夫利神社駅からリモートで操縦していて、このような大きな機械が動作しているとは想像すらしていませんでした。
運転の様子や巻上機のある機械室が稼働している様子はどこかノスタルジックな印象で、機械仕掛けのレトロな魅力を感じさせます。
○大山ケーブルカー 安全運行を担う車掌さんのお仕事
大山ケーブルカーの車掌さんのお仕事も範囲が広く、改札でのキップ確認と乗車案内をはじめ、ドアの開閉、運転士と発車準備完了の無線連絡と発車前から大忙し。車両が動き始めた後は、車内アナウンスを行いながら、安全のための前方確認を続けます。自然豊かな大山のため、時には鹿などが線路近くに姿を現すこともあるとか。各駅での車両停止操作は運転士が行いますが、万が一の緊急時には車掌が緊急停止操作を行うことも。勾配のある斜面を運行するケーブルカーですので、安全面の対策は、自動ブレーキも含めしっかりと講じているそうです。
運転士と車掌さん、それぞれが幅広い業務で大山ケーブルカーの安全運行を支えているんですね。
○定期的なメンテナンス 安全運行への取り組み
2015年の新型車両導入時には、4ヶ月半の休業期間を設け、軌道の補修や補強として分岐器を交換のほか、合成マクラギの導入やレールの入れ替えなども実施されました。大山寺駅から阿夫利神社駅にある橋部分は、橋脚の補強も。車両の刷新のみならず、安全のため軌道部分もしっかりとメンテナンスが行われました。
なおワイヤーロープは6年ごとに、巻上機を制止するブレーキドラムは10年ごとに交換することが決まっており、2025年3月上旬から中旬にかけてワイヤーロープ交換が予定されています。
大山ケーブルカーの歴史
1927年(昭和2年)に小田急線が開業、伊勢原駅が開設されました。翌年1928年に大山ケーブルカーの前身となる大山鋼索鐵道が設立され、1931年8月1日に営業を開始。現在の大山ケーブルカーと同じ3つの駅と路線で運行されていましたが、昭和初期の不況や戦争による影響により、1944年に廃線となりました。
1950年、地元や大山阿夫利神社からの要請もあり、大山観光電鉄株式会社が設立されます。営業開始まで15年を要しながらも、1965年7月11日に、新生大山ケーブルカーとして営業を開始します。(同年3月に丹沢大山国定公園に指定。)
当時は昭和の登山ブームも重なり、多くの登山客が大山を訪れます。また1970年前後には、団塊世代が成人を迎え、首都圏から近く自然豊かな大山は、身近な観光地、レジャーで訪れる人気スポットとなりました。
2008年には、「追分(おいわけ)」から「大山ケーブル駅」に、「不動前」から「大山寺駅」に、「下社」から「阿夫利神社駅」と駅名が変更されました。1965年から走り続け2500万人以上の送客をした先代車両「おおやま号」「たんざわ号」は、2015年5月17日に引退(定員101名)。2015年10月1日に現在の新型車両(定員78人)の運行が開始され、現在に至ります。
(画像提供:大山観光電鉄株式会社)
大山ケーブルカーは2025年7月に創業60年を迎えます。江戸時代に大流行した庶民の信仰と行楽を兼ねた小旅行「大山詣り」が日本遺産にも認定されるなど、今再び大山が注目されるなかで、大山ケーブルカーの果たす役割は一層大きくなっています。
ミシュランも認めた展望を誇る大山阿夫利神社下社や大山寺への参拝をはじめ、大山への登山やハイキングに。現代の「大山詣り」には、ぜひ大山ケーブルカーをご利用ください。
※掲載情報は取材日時点(2024年11月)のものです。
この記事のスポット情報
INFORMATION
茶湯寺
大山の麓で900年の歴史を誇る百一日茶湯(追善)供養の古刹。ご本尊は釈迦涅槃像です。境内には石像の観音像をはじめ、多くの石仏やお地蔵様も。供養のお寺のため、静かにお参りください。大山ケーブルバス停から徒歩約6分。こま参道にある目印の石塔を左折して、鈴川を渡ります。
INFORMATION
大山寺
良弁僧正が開いた「大山寺」。大山詣りに欠かせないスポットで、地元では「大山のお不動さん」と呼ばれ親しまれています。紅葉の名所でもあり、秋には真っ赤に色づくもみじを楽しむことができます。大山ケーブルカーの大山寺駅から徒歩3分とアクセスも良好です。
INFORMATION
さくらや
大山阿夫利神社下社から石段を降りた先にあるお休み処。昭和の雰囲気が漂う店先には、SNSで話題の「ルーメソ」と読める暖簾がかかっています。名物の大山とうふにそばやうどん、おでんに甘味などメニュー豊富で、参拝客や登山客など訪れる人が後を絶ちません。