菜の花台の展望、ヤビツ峠~蓑毛の林道散策と秦野で味わう旬の味

秦野駅からバスでアクセスできるヤビツ峠(標高761m)は、塔ノ岳や大山など表丹沢への登山口として利用されています。今回は、ヤビツ峠に向かう途中にある「菜の花台」とヤビツ峠と麓の蓑毛(みのげ)を結ぶ「柏木林道」を紹介します。下山後には、秦野駅前にある和食のお店「和食・酒彩 いま井」にて、旬を味わいましょう。

富士山や相模湾の眺望とピクニックも楽しめる「菜の花台」

秦野駅北口から乗車する「ヤビツ峠行」のバスは、平日は午前1本、午後も1本のみ。土日祝日でも午前4本、午後2本と本数が限られています。またヤビツ峠から「秦野駅行」のバスも同様に本数が限られています。事前に時刻表を確認の上、お出かけください。(※荒天、降雪や凍結の日には、運休となることがあります)

秦野駅を出発するバスは、秦野市街地を抜けると丹沢と大山の間にある県道70号を登ります。秦野側の大山詣りの参道として栄えた蓑毛(みのげ)を越えると、勾配がきつくなり、カーブも多くなります。秦野駅から約25分で「菜の花台」バス停に到着します。

標高570mの高台にある菜の花台は丹沢⼤⼭国定公園に指定される自然豊かなエリアです。敷地内には「菜の花台展望台」があり、駐車場や公衆トイレも整備されています。展望台周辺にはベンチもあり、ピクニックにもぴったりです。桜の樹が植えられており、春にはお花見スポットとしても人気で、新緑や紅葉など季節ごとに変化する木々の彩りも楽しむことができます。

敷地の奥に展望台があります。階段を登ったところにある最上部は、ぐるりと一周できる展望台スペースとなっており、晴れた日には、富士山をはじめ、秦野の街や相模湾も見渡すことができます。もちろん表丹沢の峰々や大山の頂きも、間近に見ることができます。

ヤビツ峠に向かう県道70号は、きつい坂道が続くことからサイクリストやランナーたちの聖地としても人気で、息のあがる坂の途中にある菜の花台は、ひと息つく休憩ポイントにもなっています。土日や祝日には、地元のキッチンカーが出店し、軽食やコーヒーなどをいただくことも。キッチンカーの出店予定は、OMOTAN表丹沢のSNSでご確認いただくことができます。

菜の花台から見下ろす秦野の街は南側も小高い山や丘陵に囲まれた盆地であることが分かります。視線を先にのばすと、太平洋に浮かぶ伊豆大島や江の島をはじめ、三浦半島から伊豆半島まで相模湾を一望することができます。この眺望の良さから、菜の花台は朝陽や夕陽の観賞、夜景スポットとしても人気となっています。

日没後は、秦野や湘南エリアの夜景はもちろんのこと、星空も広がり星座観賞にも最適です。早朝や夕方以降はバスでのアクセスはできませんので、マイカーやタクシーを利用してお出かけください。

それでは、ヤビツ峠に向かいましょう。菜の花台からヤビツ峠までは約3.2km、徒歩で約1時間の道のりです。県道70号は、自動車も多く、ところどころ道幅が狭くなっています。通行する車両に注意して歩行しましょう。


表丹沢と大山への玄関口ヤビツ峠と麓の蓑毛を結ぶ柏木林道

ヤビツ峠
表丹沢の二ノ塔、三ノ塔、烏尾山・・・を縦走した先にある塔ノ岳方面への表尾根登山道へのアクセスとして登山者の利用も多く、バス停のあるロータリー周辺に公衆トイレと駐車場が整備されています。平日、土日祝日ともに秦野駅と結ぶバスの本数は限られておりますので、予めバスの時刻表を確認してご利用ください。

◎ヤビツ峠からのおすすめ登山ルート
ヤビツ峠からアクセスする表丹沢と大山へのルートをご紹介します。登山に適した装備とシューズでお出かけください。
ヤビツ峠〜三ノ塔ルート
ヤビツ峠〜大山ルート

ヤビツ峠レストハウス

「ヤビツ峠」バス停横の階段を登ったところには、「ヤビツ峠レストハウス」があります。秦野産の木材を多用した店内は明るく居心地のよいスペースが広がっています。天皇陛下が若かりし頃に丹沢の山荘でお召し上がりになった味を再現した「丹沢ロイヤルカレー」が看板メニュー。当時、山荘からレシピ考案の依頼を受けたのが、料理研究家として活躍した店主平野さんのお祖母さまだったそうで、そのレシピを再現して提供しています。山歩きの途中の休憩に、ぜひお立ち寄りください。

ヤビツ峠と蓑毛を結ぶ「柏木林道」

ヤビツ峠から麓の蓑毛まで通じる「柏木林道」は、元秦野市長の柏木幹雄氏のお父さま、柏木幹田氏の尽力により1932年(昭和8年)に開通した林道です。ヤビツ峠の先に広がる山林は、江戸時代には丹沢御林とも呼ばれ、幕府が管理する木材の産地でした。自動車が普及するまでは、林産物や物資の搬入出路として、「柏木林道」は大いに活用されていた、いわば産業道路でもあったそうです。

ヤビツ峠からのアクセスは、「ヤビツ峠レストハウス」付近にある道標を確認して柏木林道に入ります。ヤビツ峠から蓑毛まで、距離約2.5km、徒歩で約50分と、県道70号を歩くよりも距離的にも時間的にも近道となります。バスの待ち時間が長い場合など、日暮れまで時間があり、体力があるようでしたら柏木林道を歩くのも良いかもしれません。

手入れされた人工林の中を抜ける林道は、日射しも多く、明るくて歩きやすいのが特徴です。広い所では道幅も2mほどあり、段差も少なめ、急登も斜度のきつい下り坂もほとんどありません。

蓑毛近くまで下りてくると、「髭僧の滝」への分岐があります。この道標周辺はミツマタの群生地でもあり、春には黄色い花が付近を彩ります。道標に従い、分岐から10分ほど歩くと金目川(かなめがわ)の源流近くに、髭僧の滝が現れます。名前は、長い髭をたくわえた僧がこの滝で修行をしていたことに由来するそうです。

勢いよく流れ落ち、滝つぼから川へ流れ込む清流を間近で見ることができます。山腹から湧き出したこの水は、秦野市内の水無川や大山の鈴川など多くの河川と合流し、やがて花水川となって相模湾に注ぎます。

滝の近くには、小休止にぴったりのベンチも設えてあります。腰掛にちょうどよい大きさの石も点在する河原は、ピクニックにも最適。滝や水が流れる自然の音を聴きながらのコーヒーブレイクは贅沢なひと時になりそうです。

髭僧の滝の分岐から蓑毛へ向かうと、まもなく林道は終点となります。付近には「春獄湧水」があり、硬度が低い湧水は、地元の人々に柔らかな名水として親しまれています。林道を歩き終えて乾いた喉を潤すにもちょうど良いですね。山道はここで終了となり、ここから蓑毛のバス停までは、金目川沿いの舗装路を歩きます。

ヤビツ峠から柏木林道を通って蓑毛バス停まで、徒歩50分程度となりますが、髭僧の滝への立ち寄りや途中の休憩時間も加味し、とくに日暮れの早い冬季は時間に余裕をもってお出かけください。

標高310m付近の蓑毛バス停付近から標高761mのヤビツ峠まで高低差約450m、片道約2.5kmの柏木林道。往復歩けば、これから表丹沢や大山に登ってみたい登山初心者の方の絶好の練習コースにもなります。

蓑毛と秦野駅を結ぶバスは、早朝や夕方以降も運行しており、蓑毛バス停には公衆トイレも整備されています。周辺には、紅葉スポットとしても人気の「宝蓮寺」や「大日堂」などの古刹や、昭和初期に建てられたたばこ農家の屋敷を移築した「緑水庵」などの名所もあります。

菜の花台での展望、ヤビツ峠~蓑毛周辺の散策を楽しんだら、バスで秦野の街へ移動し、地元の人気店で美味しい食事をいただきましょう。


秦野駅からすぐ。旬の味が楽しめる地元の人気店「和食・酒彩 いま井」

秦野の自然を満喫し、空腹を抱えて向かうなら、地元の人に支持される美味しいお店を訪れたいもの。秦野駅周辺にも、そのようなお店がいくつかありますが、今回は「和食・酒彩いま井(ゐま井)」をご紹介します。

秦野駅北口から歩いて3分ほど、水無川にかかる「まほろば橋」を渡った先、角に建つビルの2階にお店はあります。所在地は、秦野市本町一丁目一番地。秦野の中心地、駅まで至近の場所にあります。

都内の和食店、京料理店などで約10年間の修行を重ねた今井さんが、1996年に秦野に戻り、開いたお店です。

秦野市ご出身の店主 今井さんが作る評判の和食をいただきましょう。西陽も入る明るいカウンター席の他に、テーブル席とお座敷もあります。常連のお客さまは、お席だけでなく料理も一緒に予約されることが多いとのこと。予定が確実なら、前日までに予約して来店されることをお薦めします。

開店は、毎日17時。山を歩き、明るいうちから和食とお酒を楽しむなんて、極上の休日の過ごし方ではないでしょうか。手書きのお品書きには、各種お造りをはじめ、煮物、焼物、揚げ物・・サラダや食事系まで、魅力的なメニューがたくさん並んでいます。

この日の「お造り盛り合わせ」は、キンメダイ、シマアジ、鯛、ホッキガイ、タコが並びます。彩も味わいも豊かな、至福のお刺身です。

今井さんは、現在も川崎の市場、河岸まで出向き、新鮮な魚介や野菜などを仕入れ、ご自身で下ごしらえから調理まで手掛けているそうです。魚介の刺身からも素材の良さが分かります。

開店から30年を迎えるそうですね、と話しを向けると「いいお客さまに恵まれて感謝しかありません。目の前のことを毎日精一杯やってきただけです。あっという間に感じます」と、謙遜し、教えてくださいました。

この日の前菜の盛り合わせには子持ちヤリイカの酢味噌和え、ソラマメ、ワカサギの南蛮漬け、ツブ貝の煮物とからし菜のお浸し。絶妙な湯通し加減の「たら白子のポン酢」も、ピリ辛のもみじおろしとも相性抜群です。

「季節の味わいを大切にしています」という今井さんは、市場に並ぶ旬の素材だけでなく、丹沢の麓の畑でお母さまが栽培されるお野菜も、使うこともあるのだとか。それぞれ素材の旨味と食感も堪能できる奥深い風味に、地元のお客さまが足繁く通うのも頷けます。

今井さんの料理との相性も抜群の地元「金井酒造店」の「白笹鼓」をはじめ、全国の銘酒・地酒も用意されています。先ずは秦野や近隣の地酒からスタートして、相談しながら銘柄を選び、その違いを味わってみてはいかがでしょうか。

23時半まで営業されながら、朝には川崎の市場に向かい、戻り次第仕込みに取り掛かるという多忙な生活を続ける今井さん。ご自身で素材選びから、仕込みや調理まで手掛けるという料理人としてのひたむきな姿勢が、提供されるお皿を通じ、お客さまにしっかりと伝わっているようです。

お一人でも、お仲間との利用でも、楽しく和食とお酒をいただくことができるお店です。秦野駅が近いというのも、嬉しいですね。表丹沢や秦野周辺での登山・ハイキングにお出かけの際に、ぜひご利用ください。


記事のスポット情報

今回は、神奈中バスを利用してアクセスする「菜の花台」でのピクニックや「ヤビツ峠」と麓の「蓑毛」を結ぶ柏木林道のハイキング、そして秦野駅近くのお店「和食・酒彩 いま井」で旬の食事を楽しむ日帰りプランのご紹介でした。秦野駅までは新宿駅から特急ロマンスカーで1時間、快速急行で1時間10分ほどで到着します。自然豊かな表丹沢の麓のまち秦野市へ、ぜひお出かけください。

※掲載情報は取材日時点(2025年1月)のものです。

INFORMATION

菜の花台

ヤビツ峠に向かう途中、県道70号沿いにある展望スポットです。菜の花台展望台からは富士山はもちろんのこと、眼下に広がる秦野の街や三浦半島から伊豆半島まで相模湾を一望することができます。敷地内にはベンチもあり景色を見ながらピクニックを楽しむこともできます。朝陽や夕陽、夜景観賞スポットとしても人気です。

INFORMATION

和食・酒彩 いま井(ゐま井)

秦野駅北口、水無川にかかる「まほろば橋」を渡った先にある料理の美味しい酒処。開店から間もなく30年を迎える、地元のお客様が足繁く通う名店です。地元出身の店主今井さん自ら選び、仕入れた旬の魚介や野菜を丁寧に調理した和食が評判です。秦野をはじめ全国の銘酒も揃っています。丹沢登山の後に立ち寄りたいお店です。