鐘ヶ嶽ハイキングと不動尻ミツマタ鑑賞、かぶと湯温泉の名湯と料理を楽しむ日帰り旅

大山の東麓、七沢にある鐘ヶ嶽ハイキングコースは、森林浴にも最適で、ところどころ大山や横浜・東京方面の眺望を楽しむことができます。厚木市内で最も高い561mの山頂を経て、下った先で繋がる二の足林道を進むと、ミツマタの群生地として知られる不動尻に至ります。今回は、鐘ヶ嶽・不動尻の散策とあわせ、名湯と料理が評判のかぶと湯温泉 山水楼を巡る散策コースをご紹介します。
趣ある七沢浅間神社の表参道。森林浴や眺望も楽しめる「鐘ヶ嶽ハイキングコース」

【鐘ヶ嶽ハイキングコース】
・距離 約7km(広沢寺温泉入口バス停~鐘ヶ嶽~山の神隧道南側~広沢寺温泉入口バス停)
・標高 561m(鐘ヶ嶽山頂)
・所要時間 約2時間35分(休憩なし)
竜宮にあった鐘を納めたという言い伝えが残る鐘ヶ嶽(かねがだけ)は、釣鐘型の山容(写真 右側の頂)で標高561mと厚木市最高峰です。ご紹介するコースの出発点、広沢寺温泉入口バス停付近からは山頂までの高低差が450mほどあり、距離は手ごろですが、登り下りが続くコースです。日ごろからハイキングを楽しんでいる体力に自信のある方向け、中級者向けのコースとなっています。山歩きの装備、服装とシューズでお出かけください。
七沢浅間神社参道の入口の最寄りとなる「鐘ヶ獄」バス停は、本数が限られているため、「広沢寺温泉入口」バス停を利用しましょう。「広沢寺温泉入口」バス停へは、本厚木駅近くの厚木バスセンターをはじめ、伊勢原駅北口からもアクセスできます。「広沢寺温泉入口」バス停から、「鐘ヶ獄」バス停(写真上)までは徒歩で7分ほど。バス停先の二股を右折して、民家がある集落を進みます。


歩き進めると、左手にハイキングコース入口の道標があり、階段を登ると七沢石で造られた七沢浅間神社の鳥居が建っています。鳥居をくぐり進んでゆくと鳥獣防護ゲートがあります。この扉を開き、参道となる山道を進んでゆきましょう。

ハイキングコースは、七沢浅間神社の表参道として古の頃から使われる山道です。距離にして、二十八丁あり、写真の石仏がのる丁石には、大珠菩薩四丁目と刻まれています。一丁はおおよそ109mですので、ハイキングコース入口の鳥居から七沢浅間神社まで3kmほどあることがわかります。

ここからしばらくは、山林の中を進んでゆきます。杉や檜の針葉樹が多い山林ですが、ところどころナラの樹などブナ科の広葉樹もあり、新緑や紅葉など四季折々の美しい自然、色の変化を楽しむことができます。厚木市森林セラピー®基地の一部としてセラピーロード®に指定されており、木漏れ日を感じながら、森林浴を楽しみながら歩くことができます。


戦国時代にはこの地に「七沢城」があり、武将上杉定正が居城としていました。十三丁目付近にはその上杉公内室のお墓への分岐があります。二十二丁目の「覗きの松」付近からは、視界も開けてきます。この辺りは、腰をかけることができる大き目の岩もあるため、小休止にもぴったりです。

覗きの松からの展望。西側には大山も見えますが、振り返った先には、横浜のランドマークタワーなども確認することができます。見下ろすような視界の広がりに登ってきた高さを感じます。


さらに進んでゆくと、二十七丁目と刻まれた丁石の先に、長くて急な階段が現れます。342段あり、段差のステップも狭めです。注意して登り、下りしましょう。
息をきらして登り終えた先には、七沢浅間神社の境内が広がり、厳かな雰囲気の中にご社殿が鎮座しています。鐘ヶ嶽は、浅間山(せんげんさん)とも呼ばれ、山岳信仰の対象でもありました。養蚕・子宝・安産の神を祀るお社の右奥には、子宝恵みの夫婦杉、双幹の大杉もあります。


七沢浅間神社へのお参りをすませ、さらに10分ほど登ると鐘ヶ嶽の山頂に到着します。眺望はありませんが、テーブル付ベンチがあり小休止することができます。中央には、不動明王の石像が建っています。
ここから、山の神隧道(トンネル)南側までは、下りで35分ほど。途中、狭いトラバース(写真右)をはじめ、階段が崩れかけている個所や鎖場もあります。くれぐれも注意して歩行しましょう。なお、下山途中にある、山の神峠で、山の神隧道(トンネル)の北側(不動尻方面)と南側(広沢寺方面)に分岐し、どちらに進んでも、二の足林道に合流します。広沢寺方面へ戻る場合は、南側のルート(足場が不安定な個所あり)を下り、二の足林道をトンネルと反対側へ進むと、広沢寺前駐車場を経て、広沢寺温泉入口バス停に到着します。
3月中旬から4月上旬に見ごろを迎えるミツマタの大群生地「不動尻」


【広沢寺温泉入口バス停から不動尻】
・距離 約9.5km(広沢寺温泉入口バス停~不動尻広場 往復)
・標高 430m(不動尻広場周辺)
・所要時間 約3時間(往復。休憩含まず)
半球形の黄色い花を咲かせ風に揺れるかわいらしいミツマタの花。その県下有数の群生地のひとつが、不動尻です。不動尻へのアクセスは、車両の乗り入れができない区間もあり、徒歩でのアクセスとなります。鐘ヶ嶽ハイキングコースを経由せずとも、舗装された林道だけを歩行して到着することができます。
途中、真っ暗な山の神隧道(トンネル)を抜けるため、ライトなどがあると便利です。不動尻広場から先にある不動の滝や不動尻を周回できる散策コースは山道となります。なお、広沢寺前駐車場(写真左)をはじめ、道中には公衆トイレが、複数個所に整備されています。

不動尻までは舗装された二の足林道を歩きます。急登はありませんが、登り坂が断続的に続き、息があがります。休憩しながら進みましょう。


ゲートを過ぎると、登り坂も落ち着きます。ゲートから5分ほどで、山の神隧道に到着(鐘ヶ嶽ハイキングコースと合流)します。トンネルは全長230mで、照明がありませんので、ヘッドライトやスマホのライトを利用して通行することをお薦めします。
トンネルを抜けると、谷太郎川沿いの林道となり、大山の東麓、山懐の美しい景観が迫ってきます。谷太郎川のせせらぎや野鳥のさえずりを聞きながら歩いていると、20分ほどで不動尻広場に到着します。

3月中旬から4月上旬ごろにかけて最盛期となるミツマタの黄色い花が出迎えてくれます。不動尻の入口の広場にはテーブル付のベンチも用意され、休憩やピクニックにぴったりです。周辺の自然を感じながら、お弁当やコーヒータイムを楽しみ、ひと休みしましょう。


不動尻広場を起点に、周辺をぐるりと1周するハイキングコース(約1時間)も整備されています。杉林の中においては、ミツマタの黄色がいっそう映えるようで、可愛らしい風情を感じさせてくれます。

不動尻広場の奥に進むと「不動の滝」があります。大山直下の唐沢峠付近から湧き出た伏流水を水源とする清流が落ちる様は、間近で見ると迫力満点。流れる水の音とマイナスイオンを浴びることで、心身が浄化されるような気持ち良さを感じます。


滝つぼの周辺の河原には、セラドナイト(セラドン石)を含有する七沢石を認めることができます。清流の中にもあり、美しいエメラルドグリーンを放っています。河原沿いに腰掛け、清流を見ながら休憩する方も多くいらっしゃいます。

不動尻広場までは二の足林道(舗装道)を歩くため、ハイキング初心者やお子さまでも容易にアクセスすることができます。春先に限らず、初夏の新緑や秋の紅葉など四季を問わず、大山の麓に流れる谷太郎川周辺に広がる自然の景色を楽しむことができます。ハイキングやピクニックに、ぜひお出かけ下さい。
100年続く源泉かけ流しの名湯と滋味深い手作り料理の宿「かぶと湯温泉 山水楼」


不動尻までのハイキングで楽しんだ後は、名湯で疲れを癒し、季節を感じる和食をいただきましょう。大正12年(1923)の関東大震災によって湧き出したという自然噴出の湯を源泉とする「かぶと湯温泉 山水楼」は、湯治や休息を目的とする温泉好きが通う名湯として知られています。「七沢」バス停から歩いて5分ほど。山間に佇む、趣のある建物が出迎えてくれます。
現在、日帰り利用は「昼の食事付きプラン」「御夕食付プラン」と「入湯・個室休憩3時間」のいずれかとなっています。昼夜ともに食事付きプランは事前の予約が必要で、入湯と個室休憩の場合は当日空があれば利用できるとのこと。食事付きプランは、平日も定員となる日も多いとのことです。早めの予約がお薦めです。


昼の食事付きプランは、11時から14時までの3時間の利用となっています。受付を済ませ、貴重品を預けたら、さっそく温泉をいただきましょう。男湯、女湯(写真上)ともに、内風呂と露天風呂があります。
七沢は、古くからの温泉宿の多い地域ですが、山水楼は100年を超える歴史のあるお宿です。湯は、1923年の関東大震災の折、近くの田に古くからあった兜の形をした大岩の下から湧き出たとのこと。現在もその源泉をひき、加水せずに、加温のみで湯船を満たし、文字通り源泉かけ流しで提供しています。
メタケイ酸とメタホウ酸を多く含むアルカリ性単純温泉の湯に入ると、肌を包み込むような、まったりとした湯ざわりに驚かされます。美肌効果や血行促進、冷えの改善などが期待できるお湯をゆっくりと堪能しましょう。火照ったら、露天風呂横で、外気浴も。側を流れる川沿いの青々とした竹林を眺めながら過ごす時間も贅沢です。じっくりと湯に浸かっていると、歩き疲れた身体がほぐれ、気持ちすら、解けてくるようです。まさに極楽の境地です。

存分にお湯を楽しんだら、ご主人手作りのお料理をいただきましょう。昼の食事付きプランは、個室利用と広間利用でメニューと金額が変わってきます。今回は「広間のお食事コース」から「季節のお手軽定食(写真上)」を選びました。
お手軽定食といえども、ご覧の通りの品数と彩りの豊かさです。フキや菜花など旬な素材を多用した季節感のある先付けの小鉢が映えます。川魚の塩焼きは食べ応えも充分。クセのない身は、食べやすく、ご飯にもよく合います。湯上りの乾いた喉を潤すビールと一緒に食事をいただくのも良さそうです。
広間のお食事コースでは、ほかに猪鍋定食と猪鍋御膳(猪鍋は期間限定。夏季は別メニュー)も用意されています。


食事の会場となる広間には、伊勢原市大宝寺のご住職が作りはじめたというセミの形を模したせんみ凧(せみ凧)をはじめ、いろんな形のユニークな凧が飾られています。七沢は、凧作りに長けた名人も多かったそうです。
広間だけでなく、暖簾をくぐった先の玄関口から廊下や階段など、ノスタルジック感あふれる空間が広がっており、趣のある木造建築が、かえって新鮮に映ります。そのような静かな環境に身をおくと、時間の流れもスローに感じてくるから不思議です。
じっくり、ゆっくりと過ごしたいという方は、宿泊プランを選びましょう。朝夕の2食付きの宿泊プランは2名から利用できるそうです。大山登山後や七沢周辺の散策後に、名湯に繰り返し浸かり、手作りの料理と地酒を堪能。チェックアウト前に朝風呂も楽しむこともできます。
開業から101年を迎えた山水楼の三代目として、名湯を守る森本さん。お料理も、自ら中心となって調理し、山水楼の味を作り続けています。温泉も料理も両方楽しみたいなら、七沢の奥にひっそりと佇む温泉宿「かぶと湯温泉 山水楼」へ、ぜひ、お出かけください。
記事のスポット情報
INFORMATION
不動尻・不動の滝
厚木市七沢の奥、川の上流にある不動尻。春には、ミツマタが美しい花を咲かせるスポットです。ミツマタの群生地からさらに進むと不動の滝があり、広沢寺から不動尻までの起伏の少ない林道はハイキングにもぴったりで、花を楽しんだりマイナスイオンを浴びたりと自然を満喫できます。
INFORMATION
鐘ヶ嶽
鐘ヶ嶽(かねがだけ)は、厚木市内最高峰561mの標高で、山頂下に、七沢浅間神社があります。鐘ヶ嶽バス停近くから始まるハイキングコースは、神社への表参道でもあり、七沢石で造られた石仏や石丁が設置され、往時の面影を色濃く残しています。山頂と山の神隧道(トンネル)南側を結ぶ山道には、鎖場などもあり、山歩きに慣れているハイキング中級者向けのコースとなります。
INFORMATION
かぶと湯温泉 山水楼
「かぶと湯温泉 山水楼」は、神奈川県厚木市七沢に位置する秘湯の一軒宿です。1923年の関東大震災で、かぶとの形をした岩の麓から温泉が湧き出したことが、名前の由来になっています。
約1世紀にわたり、自然湧出した源泉をかけ流しで提供している老舗の温泉施設です。機械を使って汲み上げたりすることなく、地表まで自噴する湯をそのままかけ流しで楽しめます。