秦野産小麦を味わうイタリアン 手打ちパスタと窯焼きピザの人気店

神奈川県秦野市で本格イタリアンを楽しむことができる「PIZZA DINER Walking Flower」と「トラットリア フーコ」をご紹介します。どちらも秦野産小麦など地元食材を使用したメニューが支持される地域の人気店です。丹沢への登山やハイキングへお出かけの際には、ぜひお立ち寄りください。

秦野産小麦で焼きあげる窯焼きピザの専門店「PIZZA DINER Walking Flower」

都心から向かうなら、車窓から見える雄大な大山の山容も楽しみの一つですが、鶴巻温泉駅を越えた辺りから見えはじめる表丹沢の峰々は、大山とは異なる頂が連なる美しさを感じさせてくれます。塔ノ岳や鍋割山への玄関口、大倉へのアクセスに最適なのが渋沢駅です。

地元秦野市ご出身の片野さんが10年ほどの修行を経て、渋沢駅から歩いて3分ほどの場所に「PIZZA DINER Walking Flower」を開いたのは2022年9月のこと。開店から2年を経て、近隣はもちろんのこと、横浜や都内など遠方からもお客さんが来店される人気のお店となりました。

「デートやご友人とのお食事、お子さま連れのファミリーのお客さまが多いです。ご近所の90歳超えのお客さまも来店されることがありますよ」と、オーナーシェフの片野さん。さながら、客層を選ばないファミリーレストランのよう。店名に付けられた「DINER(ダイナー)」にある通り、普段使いの居心地の良さが伝わってきます。場所柄、表丹沢の山々から下山したばかりのハイカーもお腹を満たしに訪れるそうです。

サラリーマンを辞めて料理の世界に入ったきっかけを片野さんにうかがうと、「当時はまだ珍しかった本格的なピッツエリア(ピザ専門店)で食べたピザの美味しさと、生地をのばし窯と向き合うピザ作りの仕事に惹かれたからです」と、はにかみます。

湘南エリアの人気ピッツエリアでの調理をはじめ、レストランやバル等での経験も重ね、生まれ育った秦野での開店に至ったそう。その一番の理由は「秦野産の小麦があることを知って、自分がお店をやるならその粉を使ったピザを作りたいと思ったから」。

各農家が個別で生産していた小麦を地域の名産とするため、2016年に秦野小麦出荷組合が生まれます。品種選びや栽培のノウハウ共有、製粉先の確保と、生産から販売まで一気通貫で行政やJAと協働で取り組んでおり、秦野市は神奈川県内でもっとも小麦を生産する地域となりました。市内外を問わず、秦野産小麦を原料に使用したパンやパスタなどを食べることができるお店も増えています。

片野さんは、ナポリピッツアの専門店での経験を活かし、自店で提供するピザの生地も店内製造。秦野産小麦をメインにイタリア産小麦とブレンドして使用しています。手でのばし成型した生地に、手際よく具材をトッピングして、真っ赤なピザ窯へ。時折、生地を回転させながら焼き加減を見定め、生地と具材をこんがりと焼きあげます。待つこと数分、湯気が立ちあがる大きな皿が目の間に運ばれてきます。

ランチメニューには、5種類のピザが用意されています。
「マルゲリータ(写真奥。トマトソースベースにパルミジャーノ・レッジャーノ、モッツァレラチーズとバジル)」や「マリナーラ(トマト、ニンニク、オレガノ、アンチョビ)」などの定番をはじめ、季節の素材を使った期間限定のメニューも提供しています。

「ガリバタチキン&キノコ」(写真手前)も、その一つ。たっぷりのパルミジャーノ・レッジャーノとモッツァレラチーズの2種類の濃厚なチーズの上に、ほのかに醤油を効かせたガーリックバターチキンの他に、ぶなしめじや舞茸がたっぷり。和風の具材がチーズと生地によく合います。

ナポリピッツアのように、生地の縁(コルニチョーネ)で小麦の旨味を感じることができます。「生地が茶色っぽいのは、秦野産小麦の「ふすま」(小麦の表皮)です。全粒紛を使うことで、小麦の香りや味わいも感じていただけると思います。」

おおよそ2週間ごとにランチメニューの内容は刷新されるそう。和風やアメリカンな具材や味付けもいとわない、ナポリピッツアの枠を超えた「Walking Flower」のピザを楽しみに定期的に来店されるお客様が多いのも頷けます。

ランチにはパスタメニューも。「秋鮭とネギのペペロンチーノ」(写真左)は、主役となる秋鮭の柔らかい身が絶品で、ネギの甘さとディルの香りがよく合います。すだちを絞って酸味を効かせることで、後味もさっぱり。ポーションがしっかりとあるのも嬉しいです。

ピザ、パスタを問わずランチメニューにはミニサラダとドリンクが付いています。ランチデザート(別料金)の「クラシックプリン」は、ボリュームもあり、キャラメルソースまで予想を裏切らない懐かしい味わい。自分へのご褒美として、食後に追加したい一品です。

毎日11時30分開店。平日のランチは14時30分ラストオーダーで、17時から夜の営業となります。土日祝日は14時30分までランチメニューを提供。それ以降はグランドメニューで、21時ラストオーダーまで通し営業となります。下山後などの夕方早めの利用にもぴったりですね。

夜はタコスやグリル料理などのアラカルトも。生ビールをはじめ、地元秦野産茶葉を利用したクラフトビール「HANOCHA」やワインなど、アルコール類も充実しています。

お店を開くために地元に戻ってきて以来、お正月にはお母さまと一緒に大山登山が恒例となり、友人らと丹沢周辺での登山やハイキングを楽しむことも多いとか。そんな片野さんが地元素材で作る美味しいピザを楽しみに、秦野へ出かけてみてはいかがでしょうか。レアな地元ネタや最新の山情報を聞くことができるかも知れません。

※掲載情報は取材日時点(2024年10月)のものです。

INFORMATION

PIZZA DINER Walking Flower

秦野産小麦を使用した自家製のピザ生地で焼き上げる本格ピザの専門店。マルゲリータ等のナポリピッツアから和風やアメリカンな具材や味付けのオリジナルピザまで。丹沢や大山にも登る秦野市ご出身のオーナーシェフ片野さんが2022年9月にオープン。渋沢駅北口から徒歩約3分で、レジャーや登山を楽しんだ後の食事にもぴったりです。


秦野産の食材を活かした一品料理と絶品手打ちパスタが評判のイタリア料理「トラットリア フーコ」

神奈川県唯一の盆地で、北に表丹沢の山並みを望む町、秦野。市の中央を流れる水無川沿いには、桜の時期に花見客でにぎわう「みずなし川緑地」や、スポーツ・文化施設、バラ園を備えた都市公園「秦野市カルチャーパーク」があり、市民の散策と憩いの場となっています。そのカルチャーパークに隣接し、秦野の地場野菜などの食材を使った本格的イタリア料理を堪能できるのが「トラットリア フーコ」です。

カルチャーパーク内の散策路を抜けた先の閑静な住宅地にある「トラットリア フーコ」は、お洒落なサーモンピンクの外観と立派な植栽、イタリア国旗が目印です。

淡い黄色の明るい店内は、木目調の家具がゆったりと並び、こぢんまりとしたスペースながら落ち着いた雰囲気。黒板に手書きされた「本日のおすすめ」がいかにもトラットリア(イタリアの食堂)らしく、食欲をそそります。

メニューは昼夜ともコース料理とアラカルトをオーダー可能ですが、気軽に楽しむなら、3種類あるランチコースがおすすめ。「パスタコース」、「リゾットコース」、「肉または魚コース」には、それぞれ前菜盛り合わせ、フォカッチャ、飲み物がついてきます。また、コースにドルチェ2種盛りを追加することもできます。

今回は「パスタコース」(+ドルチェ2種盛り)をセレクト。最初にサーブされる前菜の盛り合わせは、ボローニャソーセージとサラミ、フリット2種(自家菜園の白茄子、秋鮭の白子)、イナダのマリネ、ブルスケッタなど、それぞれひと手間かけた前菜が、目にも舌にも美味しい一皿です。しっとりとした自家製フォカッチャはお代わりしたくなるほど。

3種類から選べるパスタは、数量限定「秦野産小麦100%名水パスタ手打ちのタリアテッレ」をジェノベーゼソースでいただきました。自家菜園のフレッシュなバジル、オリーブオイル、グラノパダーノ、カシューナッツと塩だけで、あえてニンニクは使っていないそうです。
手打ちパスタは秦野産の強力粉「ゆめかおり」と名水百選に選ばれた秦野の水を使用。「ふすま」も一緒に練りこんだ少し茶色いパスタは、小麦本来の香りとコクを味わえます。食感も手打ちならではの「もちもち」にアルデンテの「コシ」をプラスした独特のもので、濃厚な旨味のジェノベーゼソースがよくからみ絶品でした!

手打ちパスタはタリアテッレの他にリグーリア州伝統の「コルツェッティ」という珍しい円形パスタ(写真右のおせんべい状のもの)も用意されています。専用の木製スタンプで型押しされた模様は、もともと土地の貴族たちの家紋だったとか。
※手打ちパスタは数量限定のため、売り切れの場合があります。

コースの締めは季節ごとに変わるドルチェの2種盛り。今回は、表面がサクッ、中はしっとり柔らかく焼き上げたチョコレートケーキ「トルタテネリーナ」と香り高いラフランスのソルベをエスプレッソとともにいただきました。

コース料理以外にも、地元の食材を使った一品料理も充実しています。この日は丹沢で狩猟された猪のバラ肉を使った「ブラザート」。ブラザートとはピエモンテ州の郷土料理で、赤ワインに漬け込んだ肉を長時間煮込んだもの。ほろほろと崩れるほど柔らかい猪のバラ肉はジビエならではの力強さを残しながらも、臭みはなく、付け合わせのトウモロコシのポレンタ、空心菜のソテーとともに満足感の高い一皿でした。

店で使う野菜は地元の農家や自家菜園のものがほとんどだそうです。自家菜園の朝採れ野菜やハーブは店頭に置かれたラックで配架販売されており、近隣の方が散歩がてら買って帰られることも多いとか。

オーナーシェフの宅見知明さんは生まれも育ちも秦野市。地元のイタリアン、フレンチのレストラン勤務を経て、食品メーカーの商品開発の仕事に携わる中で、「秦野に本格的なイタリア料理店をつくりたい!」という想いが強くなり、イタリアでの料理修業を決意するまでになったそうです。
そして、2004年、宅見さんはイタリアへ。北西部のピエモンテ州とリグーリア州の間にある町、ノヴィリグレ(有名な白ワイン、ガヴィの産地)のリストランテで約1年間、本場の郷土料理を学び、修業を積みます。
帰国後は、ケーキ店に3年間勤めてデザートづくりを基礎から学び直し、2008年に現在の場所に念願のレストラン「トラットリア フーコ」をオープンされました。

秦野の良質な水に育まれた農産物。山菜、きのこ、ジビエなどの山の恵み。地域の豊かな食材を積極的に使い、本格的なイタリア料理を創作するお店は、カジュアルで温かいお店の雰囲気もあり、たちまち人気店となりました。
オープンして16年。現在では、幅広い年齢層の女性客を中心に、常連のお客様のご利用も多いそうです。

「慣れ親しんだ秦野の味を発信していきたい」と言う地元愛に溢れた宅見シェフのイタリア料理を味わいに、秦野へ出かけてみてはいかがでしょう?

※掲載情報は取材日時点(2024年10月)のものです。

INFORMATION

トラットリア フーコ

秦野市カルチャーパークに隣接した閑静な住宅地にあるイタリア料理店。北西イタリアで修業したシェフが地元秦野の食材を存分に使う本格的イタリアンをコース料理やアラカルトで楽しめます。中でも、数量限定の「秦野産小麦100%名水パスタ手打ちのタリアテッレ」は小麦の香りが素晴らしく、もちもちした食感とアルデンテのコシを同時に味わえる逸品です。